2003年12月5日(金)「しんぶん赤旗」
今年に入り、大阪の民間中小劇場や東京の民間音楽ホールが閉鎖されました。長引く不況で芸術・文化活動をとりまく状況は厳しさを増しています。文化芸術振興基本法が制定されて二年がたちますが、文化行政は芸術・文化活動が直面する苦難にこたえているのでしょうか。
今年四月、文化庁の映画振興に関する懇談会が提言を発表しました。提言には、撮影所への支援や労働条件の改善、映画フィルムの保存など、長年の映画人の要望を反映した内容ももりこまれました。来年度文化庁予算概算要求では、映画フィルム保存に今年の九倍が計上されました。また、党国会議員団の国会での質問や要望書にこたえ、政府が映画現場での労働条件の実態調査を約束しました。
しかし、要望が強い撮影所への固定資産税の減免や製作助成は改善されませんでした。映画分野以外では、予算上の枠組みは既存の文化庁事業の延長のままで、芸術団体への重点支援である「新世紀アーツプラン」は微減となりました。税制支援をめぐっては、芸能団体への不当な源泉税の前納制が今年四月に撤廃されました。しかし、映画館や民間劇場・ホールなどの文化施設にたいする固定資産税の減免は、関係団体から強く要望されてきましたが、すすんでいません。
現代舞踊協会と日本劇団協議会は、東京芸大に舞踊・演劇学科を設立することなどを求めて署名運動を行い、七万人の署名を国会に提出しました。今年度も新国立劇場の演劇部門の研修事業は予算化されませんでした。
このように、既存の文化庁の助成事業をこえた税制支援や人材養成のような基盤整備は、いまだに本格的に着手されたとはいえない状況です。
日本芸術文化振興会が、十月に独立行政法人に移行させられました。すでに文化庁予算では、振興会事業への補助が三分の二に削減されましたが、政府による「中期目標」は、事業費の毎年1%の効率化と、「事務的経費」を五年で13%削減するという大幅な削減を求めています。小泉内閣の「構造改革」路線が芸術・文化活動の障害となっていることを端的に示しました。さらに、小泉内閣によって、「公益法人改革」が「原則課税」の方向ですすめられようとしており、芸術団体への影響が危ぐされます。
地方自治体でも効率優先の「行政改革」によって、文化事業をおおもとから切り捨てる動きが本格的になっています。東京都が十一月に発表した「アクションプラン」では、東京都交響楽団にたいして、一般の民間企業と同様に扱い、「経営感覚」や契約雇用制を導入しようとしています。そのほか、兵庫県芦屋市では「行政改革」で市立美術館の閉鎖がもくろまれています。文化にまで「効率」一辺倒を押しつける政府や地方自治体の姿勢にメスを入れる必要があるといえます。
(辻 慎一・党学術文化委員会事務局)