2003年12月6日(土)「しんぶん赤旗」
年金改悪の厚生労働省案は平均的手取り賃金(ボーナス込みの月額換算四十万一千円)の59・4%とされる厚生年金の給付(夫が四十年加入、妻は専業主婦)を最大で同賃金の50%にまで下げます。実施されると子育て世代の将来不安にいっそう拍車をかけます。
改悪されると平均的収入の一九六〇年生まれの会社員の場合、六十五歳から二十年間に受け取る年金は約千百三十万円も減ります。一方、改悪案には保険料値上げも盛られており、これが実施されると、同じ人で二百五十万円以上の負担増。給付カットと保険料値上げによる損失は合わせて約千三百八十万円にのぼります(同省案「試算結果」で試算)。
平均的収入のサラリーマンの場合、年金は月四万七千円の減額です。
「すごい額ですね」とうなるのは同じ一九六〇年生まれの会社員田辺英昌さん(43)=東京・中野区。「でもいまは子育てで精いっぱい。たとえ年金が減らされたとしても、老後に備える余裕なんて全然ありませんよ」
高校卒業後、都内の会社に就職。月収は手取りで平均二十七万円。パートでホームヘルパーをしている妻(扶養家族)と合わせ月三十四万円程度の収入です。
子どもは十四歳をかしらに十二歳、九歳。長男は来年、高校受験です。私立に行くと年間百万円程度かかる学費は学資保険が頼り。「これだけはとがんばってかけてきました。まとめて保険料を払うとボーナスはほとんど消えてしまう」
家族旅行は二年前に一度、一泊二日で行ったきり。故郷の山口県への盆帰りは「交通費がかかる」と田辺さん一人です。子どもの衣類は新品をときどき買いますが、夫婦のはもっぱらバザーで調達しています。
そうやって節約しても月々の収支が赤字になるときもあり、「貯金はあっても百万円台」といいます。
苦しい子育て世代の家計。ところが年金改悪案が実施されると、厚生年金保険料は、来年十月から十九年間、毎年0・354%(総報酬ベース、労使折半)ずつ引き上げられます。
「全体として賃金が下がっているこの時代に保険料を上げるんですか? けしからんですね」。田辺さんは怒ります。改悪案の全体像を知った田辺さんは、言いました。
「保険料は取るだけ取るけど、年金は定年後も七十、八十歳まで働かないと暮らせないような低い水準にする。積立金の運用で六兆円も損益を出しているのは無反省。公共事業のムダ遣いには手をつけないで、こういう改悪だけぶち上げるなんてとんでもない」(内藤真己子記者)