2003年12月11日(木)「しんぶん赤旗」
【北京10日小寺松雄】日本政府がイラクへの自衛隊派兵を決めたことに対し新華社通信は九日の東京発の解説で、「イラク情勢がますます悪化し、死亡した外交官の葬儀が終わったばかりなのに、日本政府はなぜ国民多数の意見も顧みずに派兵を急ぐのか」と指摘しました。
「日本は経済力だけでなく軍事力でも大国であることを示そうとしている。日本の自衛隊が初めて海外に出て戦闘中の米英軍を支援するのは、日本の戦後防衛政策の一大転換だ」との日本の政治評論家の発言を引き、警鐘を鳴らしています。
中国共産主義青年団が主管する中国青年報十日付は、東京駐在記者の「小泉内閣のイラク派兵強硬姿勢の背景」という論評を掲載。日本政府の狙いに関し、「戦争についての戦後の束縛を何としても打ち破ろうと執念を燃やしてきた。自衛隊という軍隊を世界の戦争地域に派遣するのは日本政府の既定方針だった」との自衛隊出身の大学教授の発言を紹介しています。
また、ベーカー米駐日大使の発言を引き、日本政府の決定の背景に米国の意向があると指摘。「今回のイラク派兵を最も歓迎しているのは米国以外ない。米国はイラク派兵について一貫して日本に圧力をかけてきた」と述べています。
シンガポールの華字紙聯合早報十日付は、「日本政府は、国民の大部分の反対を無視してイラクに千百人の自衛隊を派兵する全体計画を閣議決定した。これは第二次世界大戦以来で最大の海外派兵だ」と東京通信員電で報じました。記事は「小泉首相は閣議決定後の記者会見で『自衛隊派遣は戦争にいくのではない』と声高に叫んだ。しかし東京の首相官邸近くではイラクへの派兵に反対するデモ行進が行われた」と伝えています。
同紙早報九日付は、「日本の派兵、行くも退くも困難待ちうける」と題する論評記事を掲載しました。
同記事は「戦後の日本の海外派兵への展開の歴史から見て、今回は絶好の機会で、たとえ多くの困難や万一の危険があろうと小泉政権は全力をあげてその使命達成への責任を果たそうとしている」「これは日本の政治の現実でもあるが、日本には依然として平和憲法がある。国民は決して何も知らないまま再び犠牲になりたいとは思っていない」と強調。
「危険があるのを知りながら無理やり自衛隊を出陣させ、もし死者が出れば重大な政治問題に発展するかもしれない。小泉内閣崩壊の危険もある。いずれにせよ、日本が軍事大国化の歩みを加速させているのは、ますます明らかだ」と結んでいます。
【パリ9日浅田信幸】自衛隊のイラク派遣決定についてフランスのマスコミは、「歴史的な、しかし異論の多い決定」「日本が紛争地域にこれほど大規模な部隊を送るのは初めて」など、強い関心を寄せています。
共通して取り上げられているのは、この決定が、世論の強い反対にあっていることです。
保守系のフィガロ紙は電子版九日付国際欄のトップで報じ、「国民は圧倒的多数がイラクへの部隊派遣に反対している」「首相は北朝鮮に代表される危険から日本が米国に連帯しなければならないと主張しているが、国民は(テロと北朝鮮の)脅威は非対称的なものと見ている」「会った政財界の要人はすべてフランスの立場を称賛し、自国が米軍に追従していることを残念だとのべている」と報じました。
十日付ルモンド紙は、イラクで活動している日本の非政府組織が危険に巻き込まれることを指摘していると報じ、「軍の展開がわれわれの努力の中立性を傷つける恐れがある」とのボランティア組織責任者の発言を引用しています。