日本共産党

2003年12月12日(金)「しんぶん赤旗」

作家・大江健三郎氏が仏紙に論文

イラク派兵 私は怒っている

「テロの標的になる危険も」


 仏紙リベラシオン(一日付)はノーベル文学賞を受賞した作家の大江健三郎氏の「私は怒っている」と題する一文を掲載しました。同紙編集局の求めに応じたものです。大江氏はこのなかで、自衛隊のイラク派兵は小泉政権の対米従属の表れだと指摘。派兵は「テロとたたかうため」という小泉首相の主張は間違いであり、これによって「日本がテロの標的にされる危険が深刻になる」と批判しています。

 「私は怒れる老人である」との書き出しで、大江氏は、総選挙で小泉首相が再選され、イラクに日本兵を派遣する準備がなされていることに深い憂慮を表明。イラク派兵は「戦争の初めから予見されていた。最初から日本は『ブッシュ大統領に同意する』『無条件で』ということを小泉首相は決めていたのだ」と述べています。小泉首相が「ブッシュ大統領に同意する」「無条件で」と決めていたことは「日本が米国の安全保障政策に従属している証拠だ」と強調。「わが国は従属している。だから私は怒っている」と述べています。

 そして、「世界中で大多数の国が戦争反対を表明している。ほとんどの国がこの戦争の根拠に同意していなかった。この点で、日本の首相は責任感が欠如している者の一人だろう。彼は完全にアメリカの政策に賛成している。日本のほとんどのジャーナリストや知識人はそれに反論できていない」と指摘。「第二次大戦以来、日本がこれほど従順だったことはない」と強調しています。

 また、総選挙で「この政策に反対する左翼諸党が議席を半減させた」ことで「首相は活動の自由を得た」とし、小泉首相がブッシュ米大統領を批判しないので、ブッシュは日本が聞き入れているかのように振る舞えるとも指摘しています。

 大江氏は、われわれは核兵器と国際テロリズムという「二つの巨大な暴力」とたたかわなければならないと述べた上で、核兵器は「暴力の手段」としてしか使われ得ることはないのだから「昨日のイラク、明日のイランと北朝鮮が核兵器をもつことを黙認できない」と指摘。しかし、「慎重でなければならない。イラクの核保有は切迫したものだったのか? ジョージ・ブッシュ大統領自身、そうではなかったと知っていた」と述べ、イラク戦争が誤りだったことを強調しています。

 そして、日本は「このような戦争にけっして協力してはならない。だから、イラクに派兵してはならない」と力説。「自衛隊の隊員が現場に送られれば、日本がテロの標的にされる危険は深刻になる。日本の首相の任務はそうした事態を招くことを避けることだ」と強調しています。


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