日本共産党

2003年12月12日(金)「しんぶん赤旗」

イラク自衛隊派兵

首相会見のボロ次つぎ

武器・弾薬輸送で食い違い

憲法ねじ曲げに批判集中


 イラクへの自衛隊派兵の「基本計画」決定を受けて小泉純一郎首相が行った記者会見(九日)には、与党内からも「説明になっていない」などの不満の声が出ています。戦後初めて戦地に武装自衛隊を送り込もうというのに、“精神論”をぶって派兵受け入れを迫ったり、憲法を持ち出して憲法破りを正当化したりと、いいかげんさ、でたらめぶりが際立っていました。

“勢いで言った”「驚天動地発言」

 その一つが、武器・弾薬の輸送問題です。

 首相は記者会見で、自衛隊による武器・弾薬の輸送は「行わない」と明言。「基本計画」に基づいて作成する自衛隊派兵の「実施要項」で明示する意向を表明しました。

 ところが、政府は、イラク特措法の国会審議で、自衛隊による武器・弾薬の輸送を行うという考えを示してきたのです。首相の発言は、政府内で「驚天動地の発言」(外務省幹部、「朝日」十一日付)と受けとめられ、「基本計画」をまとめた内閣官房の担当者も本紙の取材に「なぜ、そのような発言が出たのか」と真意を計りかねた様子でした。

 そのため、福田康夫官房長官は翌十日の記者会見で、武器や弾薬を携行した兵員の輸送は可能との見解を示し、首相の発言を一部変更。輸送対象から除外される武器・弾薬の定義についても「常識的に考えてください」とし、運用面での抜け道を残しました。

 防衛庁では、首相の発言について「勢いで言ったのではないか」(同庁筋)という声が上がっているほどです。

 首相が「日本は戦争に行くんじゃない。自衛隊は復興人道支援に行く」と述べたのも、ごまかしです。

 「基本計画」には、自衛隊の「安全確保支援活動」として米英軍など占領軍への軍事支援が明記されています。

 福田官房長官の十日の記者会見では、記者が「総理は(九日の会見で)、安全確保支援活動について一言も触れなかった」と指摘。福田長官は「治安を維持する他国の支援をするということは、間接的に復興に役立つ」などとしどろもどろ。最後には、九日に発表した首相談話の中には「書いてある」というのが精いっぱいでした。

“憲法前文を暗記しただけ”

 首相の記者会見で、なかでも批判の的になっているのは、「自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」と憲法前文の一部だけを取り上げ、派兵の正当化をはかったことです。

 これには、マスメディアも「前文の一部を取り出して都合よく解釈したに過ぎない」「(首相は)9条には一切触れることがなかった。前文と9条には『すき間』があるとかねて言ってきた首相だが、もはや9条の存在を忘れ去ろうとしているかのようだ」ときびしく批判しています(「朝日」十一日付社説)。

 報道によると、首相は記者会見に向けて「この一週間、憲法の前文を暗記していただけ」(「日経」十日付)といいますが、実際の会見では、メモに目を落として前文を読み上げました。

 「イラク派兵は憲法違反ではないか」という批判に、こともあろうに憲法を持ち出して“反論”を試みたようですが、逆に憲法をつまみ食いし、ご都合主義的にわい曲する首相のやり方に批判が集中することになったのです。

 憲法の“暗記”に時間を費やして、肝心のイラク特措法や「基本計画」の内容さえ理解していなかったとすれば、そもそも国民に派兵受け入れを迫る資格はなかったということになります。


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