2003年12月12日(金)「しんぶん赤旗」
日本政府のイラクへの自衛隊派遣決定に対する批判が海外の新聞で続いています。
【ロンドン10日西尾正哉】英紙フィナンシャル・タイムズ十日付社説は、日本政府のイラクへの自衛隊派遣決定について「国内では極めて不人気だ」と指摘しました。
「泥沼へと沈むイラク」と題した社説は、「日本の小泉首相は自衛隊をイラクに派遣することでワシントン(米政府)から称賛を得よう。それは、第二次大戦で敗れて以来、平和憲法によって統治されてきた国で、軍隊派遣が非常に敏感な問題であるからだけではない。二人の外交官が殺害後は特に国内では極めて不人気だからだ」と指摘しました。
同社説は「象徴的なジェスチャー」である自衛隊派遣は「米国にとって占領を国際化することがいかに困難かを示すものだ」とのべ、イラク復興にとって最善のチャンスは「国連の任務の下で行うものだ」とし、国連の権限の下でイラク復興をすすめるべきだと強調しました。
英紙タイムズ十日付は、自衛隊派遣を報じた記事の中で「派遣計画は多数の日本人に反対されている。多くの日本人は日本の平和憲法に反するし、テロリストの標的になると確信している」と指摘しました。さらに同記事は「自衛隊派遣が失敗すれば、特に自衛隊員が殺されれば、小泉首相とその政府が倒れる危険もある」とのべました。
【ベルリン10日片岡正明】小泉内閣がイラクへ自衛隊の派兵を閣議決定したことについて、ドイツ各紙十日付は批判的な見方をもって報じています。
南ドイツ新聞は、「日本が事実上まだ戦争がおこなわれているところへ第二次大戦後初めて派兵する」と報道。派兵の背景には、前の湾岸戦争で資金援助しかせず「小切手外交」と批判され、米国から「派兵で旗を見せよ」との圧力を受けていたと指摘しました。しかし世論調査では80%の国民が反対しており、この決定で「小泉首相の人気は著しく落ちた」としています。
ノイエス・ドイチェラント紙はDPA通信の記事とともにロイター通信が配信した日本の反対デモの写真を掲載。DPAの記事では、自衛隊イラク派兵には、米国との約束を守るだけでなく、平和憲法の「拘束」から抜け出し、「憲法を見直す」意図があると伝えています。
【モスクワ10日田川実】自衛隊派兵の閣議決定についてロシアの「独立新聞」十日付は、「米兵とモスクが攻撃された」との見出しと並べて「日本は戦後初めて自国兵士を戦争中の国に送る」と大書しました。
国防省機関紙「赤い星」同日付は、「派兵計画には国内で反対の声が起きている。日本の部隊が武器・弾薬を米軍のために輸送する可能性も排除できない」と指摘しました。
【北京11日田端誠史】中国の英字紙チャイナ・デーリー十一日付は「日本はその軍事的役割を再検討する必要がある」と題する論評を掲載、日本のイラクへの自衛隊派遣が「第二次大戦以来もっとも重大でもっとも危険な海外における軍事的活動になりうる道に通ずる」ものだと述べています。
論評は「(日本の)有権者の強い反対にもかかわらず」小泉内閣が自衛隊のイラクへの派遣を決めたと指摘、「イラク政府の要請よりは占領当局の要請」に沿って、戦争が終結していない被占領地域に初めて重武装した自衛隊部隊を日本政府が決定したとみなしています。また米軍の武器輸送など後方支援をすることにも注目しています。
小泉首相が「日米同盟と国際協力」を述べているが、米主導の対イラク侵略が国連からの青信号を得ていない状況であるから、イラクでのいわゆる国際協力は米国が中東に対する強い統御を維持している限り議論のあるところだと指摘しています。
同論評は日本の憲法第九条を引用し、国際紛争の解決に軍事力の使用、威嚇ができないことになっていると述べ、集団的自衛権行使も禁止されているとの見方を伝えています。
イラクで米軍や同盟軍がほぼ毎日ゲリラの襲撃を受けている状況では戦闘地域と非戦闘地域の弁別ができない実情を説明し、自衛隊員も戦闘に類似する状況におかれ、軍事力を使用することにならざるを得ない場合があるだろうと推測しています。