2003年12月12日(金)「しんぶん赤旗」
狛江市の矢野ゆたか市長が十一日の市議会本会議で行った、イラクへの自衛隊派兵についての答弁は次の通りです。
イラクへの自衛隊派兵についてですが、ご指摘の通り、一昨日その基本計画が決定されました。戦闘が継続している地域へ初めて重武装の自衛隊が派遣されることになります。
私は、旧フセイン政権が極めて非民主的な専制政治を行っていたとしても、それはイラク国民自身が転換させるべきもので、外国が軍事力を使って倒すことは許されないし、人権弾圧や大量破壊兵器の疑惑に対しては、国連を中心に対処すべきだったと考えています。
したがって、アメリカなどのイラク攻撃は不当であり、その結果生まれた占領支配は、一日も早く国連を中心とした枠組みに移行させ、復興支援にあたるべきだと思います。ましてイラク攻撃の口実になった大量破壊兵器はいまだ発見されていないのですから、アメリカの占領支配の正当性は失われています。
イラクにおける日本人外交官や国連、赤十字、NPOなどへの攻撃は決して許されるものではありませんが、米英軍などへの攻撃はたんなるテロ行為だけでなく、イラク国民の抵抗運動の要素が強まっているという報道に、私は注目しています。
こうした中での自衛隊派遣は、米軍などの占領支配への支援行為となり、日本が攻撃対象になることは避けられなくなります。また、国連が中心となったイラク復興支援を妨げるものであり、何よりも日本国憲法を蹂躙(じゅうりん)するものであると受け止めています。
小泉首相は、記者会見で日本国憲法前文の一節を引用し、「憲法の理念に沿っている」旨語りましたが、自衛隊の海外派兵を合理化するために、平和主義を原則の一つとする日本国憲法の前文を利用したことに、大きな憤りを覚えます。
前文は、条文全体を流れる共通した精神、国家の理念や国民のめざすべき姿を語っており、平和・外交にかんしては第九条によって具現化されているものです。その九条にふれないどころか、改定さえねらっている前文の、都合が良い部分だけをつまみ食いするというやり方は、とうてい許されません。
小泉首相が引用した前文には、「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の…法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる」という表現がありますが、首相にとって、その「他国」とはアメリカだけであって、イラクという国とそこに生きるイラク国民は念頭にないと、感じています。
一昨日の自衛隊派兵の閣議決定を聞いた、イラク統治評議会、これはアメリカの肝いりでつくられたイラク人による機関ですが、その報道官は、「これ以上の外国軍はいらない。イラクの問題は、イラク自身で解決すべきである」と語っており、まさにこの声を無視するところに日本政府の根本的な誤りがあると考えます。
「われわれ狛江市民は『日本国憲法』の前文と世界の恒久平和を達成するという精神および第九条に記された『戦争の放棄、交戦権の否認』を狛江市および狛江市民の行動原理として高く掲げたい」という宣言を行った、平和都市狛江の市長として、イラクへの自衛隊派遣には強く反対することを表明いたします。