2003年12月13日(土)「しんぶん赤旗」
小泉政権は自衛隊のイラク派兵について「年内でもいいのではないか」（公明党の冬柴鉄三幹事長、九日）と、陸上自衛隊に先行させて航空自衛隊を派兵する準備を急いでいます。陸自の派兵より空自の方が安全というのが口実です。しかし実際には、空自の活動予定地では占領軍への攻撃が相次いでいます。
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政府は来週にも派兵の具体的内容を定める「実施要項」を決定し、空自の先遣隊を年内に派兵すると報じられています。石破茂防衛庁長官は十二日の記者会見で「確定したものはない。作業中だ」とのべ、その可能性を否定しませんでした。
政府が九日に決定したイラクへの自衛隊派兵に関する「基本計画」は、空自の任務を、クウェートの空港とイラク国内のバグダッド・バスラ・バラド・モスルなどの各空港間の空輸としています。
空輸する物資は「内実は米英軍向けがほとんど」（「日経」十日付夕刊）といわれ、カタール駐留の米空軍が中心となって行っている各国の輸送調整のもとで空自も活動すると報じられています。政府は、武装米兵の輸送も可能としています。
無法な戦争につづく不法な占領支配でイラク国民の敵意の対象となっている米英占領軍に組みこまれた支援が、空自の任務の中心になる危険があるのです。
「基本計画」を閣議決定したその日、バグダッド国際空港を離陸した米軍のＣ１７輸送機が、ミサイル攻撃を受け、被弾しました。
「いろいろなルートから情報収集中だ」（津曲義光空幕長、十二日）
「（空自の）Ｃ１３０がやっているのと同じ攻撃回避のフライトパターンだったのか。詳しい情報が入っておらず、（空自が回避できるかどうか）一概にはいえない」（石川亨統幕議長、十一日）
自衛隊幹部は、派兵予定のＣ１３０輸送機が同様の攻撃を受けた場合の安全性を断言できませんでした。
同空港では、このほかにも、米軍機や民間機などに対するミサイル攻撃が相次いでいます。空自の活動とされているモスルでも、米軍ヘリが攻撃を受け、墜落しています。バラドやバスラでも、米占領軍だけでなく、同盟軍や民間人への攻撃も続いています（図）。
空輸拠点とされているクウェートについては、政府の専門調査団の報告書でさえ「密輸された地対空ミサイルは航空機の脅威となり得る」と指摘しています。
だからこそ空自は、Ｃ１３０のミサイル攻撃回避のために離着陸訓練を行い、塗装を空色に塗り替えたりしているのです。「空自の方が安全」とは、とてもいえないのが実態です。
イラク特措法は、自衛隊が活動する全期間を通じて戦闘行為がないと認められる地域（非戦闘地域）にしか派兵できないとしています。
政府はフセイン残党による組織的計画的な攻撃は「戦闘行為だ」とし、さらに「フセイン残党（の攻撃）と確認できない、その可能性が排除できない」場合でも、「（戦闘が）予測される地域になる」（石破防衛庁長官、六月二十七日、衆院イラク特別委）とし、派兵できないとしてきました。
戦闘の可能性があるだけでも自衛隊は活動できないとしていたのに、すでに攻撃が相次いでいる地域への派兵を強行しようとする−。空自の派兵は、憲法はおろか、イラク特措法も、これまでの政府の答弁をも踏みにじるものです。（田中一郎記者）
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