2003年12月13日(土)「しんぶん赤旗」
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福田康夫官房長官が十二日、世論調査で過半数を超えた自衛隊のイラク派兵反対の声を「考え直すべき機会ではないか」と述べたことは、小泉内閣が国民世論を敵視し、国民への約束を平気で覆す政権であることを示しています。
福田長官は記者会見で、「危ない所にいくことは避けるべきだとか、自衛隊がそういう所までいくべきではない、ということだけで済むのかどうか」と反対論に異を唱えました。しかし、そもそも全土戦闘状態のイラク国内に「戦闘が行われることがないと認められる地域」=「非戦闘地域」という概念をイラク特措法でつくり、自衛隊派兵を強行しようとしているのは政府自身です。
その「非戦闘地域」について政府は何と説明していたでしょうか。「わが国が海外において武力の行使をしないということを明確にするための制度的担保」(石破茂防衛庁長官、六月二十五日の衆院イラク特別委員会)で、「憲法上、当然の要請」(同、六月二十六日)だと指摘。その上で、安全の確保についても「基本的な方針の策定から活動の実施の際に至るまで、最大限の配慮を行う」(小泉首相、六月二十四日の衆院本会議)と、繰り返してきたのです。
「産経」八日付の世論調査では86・4%がイラクが「戦争状態にある」と回答しました。自衛隊のイラク派兵に過半数を超える国民が反対しているのは、不法な軍事占領に日本が軍事力をもって参加すれば、この戦争状態をさらに深刻化させるからです。また、泥沼化の一途をたどるイラクの現実をみれば、政府の言い分が何ら満たされないことを懸念しているからです。
そうした国民世論を意に介さないばかりか、「考え直すべきだ」というのは、政府自身の言明を覆すに等しいといえます。
小泉純一郎首相は「政府の批判とか自衛隊(のイラク派遣)反対ばかり言わないで、マスコミのみなさんも激励してあげてください」(十一日)と、マスコミに政府批判を控えるよう異例の注文をつけました。
政府がこれほど国民世論を敵視するのは、道理のないイラク派兵に批判が広がることを恐れているからです。「考え直すべき」は政府自身です。(高柳幸雄記者)