2003年12月13日(土)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 旧日本軍が中国に遺棄した化学兵器の処理責任も定めている、化学兵器禁止条約とはどんな条約ですか。(山形・一読者)
〈答え〉 双方が化学兵器を大規模に使用し、大量の犠牲者を出した第一次世界大戦の反省から、毒ガスなどの使用を禁止した一九二五年のジュネーブ議定書が結ばれました。同議定書は、戦争での化学兵器使用は禁止しましたが、生産・開発・保有などは禁止しませんでした。しかし、化学兵器を開発・保有した天皇制政府の日本は、中国への侵略戦争で実際に使用しました。またアメリカと旧ソ連は化学兵器でも軍拡を競い合ったため、米ロ両国は化学兵器を大量に貯蔵しています。
このような問題をただす取り組みが結実したのが、化学兵器禁止条約(化学兵器の開発、生産、貯蔵及び使用の禁止並びに廃棄に関する条約)です。条約名のように、化学兵器の使用だけでなく開発・生産・貯蔵なども禁止し、保有国には廃棄を義務づけています。一九九二年十一月に国連総会で採択され、九三年一月にパリで署名式が行われました。
同条約は、批准書の寄託が六十五カ国に達して百八十日が経過した、一九九七年四月に発効しました。批准国は、発効から十年以内に保有化学兵器の廃棄を義務づけられています。このなかには他国内に遺棄した化学兵器も含まれます。日本政府が、中国に遺棄した旧日本軍の化学兵器の処分を迫られているのはこのためです。中国では遺棄化学兵器による死傷事故が続発しており、日本は速やかに責任を果たすべきです。
条約実施状況を検証するために、化学兵器禁止機関(OPCW)を設置しています。OPCWは、疑惑施設を抜き打ち査察するなどの権限を認められています。しかしアメリカは、条約批准と同時に、査察を認めない国内法も定めました。二〇〇二年には、米を査察しようとしたOPCW事務局長の解任動議を出し、日本などの同調を得て解任させています。
(博)
〔2003・12・13(土)〕