2003年12月14日(日)「しんぶん赤旗」
公明党は、みずから賛成した小泉内閣のイラク派兵計画決定を「現実の政治のなかで取り得る最善の策」(冬柴鉄三幹事長インタビュー、公明新聞十一日付)などと美化。公明新聞十三日付主張では「『平和の党』ゆえの賛成」と開き直っています。自衛隊を戦後はじめて戦地に送り出すという歴史的暴挙を「最善の策」といいきるところに、「平和の党」の反対物となった公明党の姿がくっきり表れています。
冬柴氏は、同インタビューで、九日の党首会談での申し入れや自民党とのあいだの覚書をあげ、「政府は陸上自衛隊について治安状況が好転するのを見極めて、公明党の意見も十分聞いて判断することになったわけで、…明確な歯止めをかけることができた」などとのべています。
自衛隊の海外派兵を後押ししながら、「歯止めをかけた」などと宣伝するのは、PKO(国連平和維持活動)協力法以来の同党の常とう手段です。しかし、この「歯止め」なるものが効いたためしは一度もありません。逆に政府が派兵を重ねるたびに、「歯止め」がどんどん後退してきたのが現実です。
今回の「歯止め」もなんの役にも立たないことは、小泉首相自身が「状況を見極める」といっておきながら、まともな説明もなしに派兵の基本計画を強行したことをみても明らかです。
なにより、「現地の治安状況を見極める」のは、派兵計画決定の前になすべきことであり、「現地の治安状況」が不十分なら、派兵計画を認めなければいいではありませんか。派兵計画を認めながら、実施段階で意見を言うから「歯止め」になるといってもなんの保証もありません。陸上自衛隊だけを問題にして航空自衛隊などの派兵を当然視しているのも、派兵推進の立場を示すものです。
イラクの治安状況の悪化は、冬柴氏自身も「イラク復興支援特措法が成立した時点と比べると…現地の治安状況は悪化しています」と認めています。ところが、なんの根拠も示さずに、「特措法の骨格を見直さなければならないほどの前提の崩れにはなっていません」と強弁しています。
自衛隊の派兵地域が「戦闘地域」か「非戦闘地域」かは、イラク特措法の骨格中の骨格です。
この問題で、イラクを占領している米軍のサンチェス現地司令官は「イラク全土が戦闘地域」と言明。国連のアナン事務総長も十日に提出したイラクの現況にかんする報告で、「反乱者の攻撃の危険は現実的」であり、「より高度で強力になっている」と指摘しています。
自衛隊派兵のために政府・自公両党が強行したイラク特措法の前提はすでに崩れているのです。
一方で冬柴氏は、「一部野党などのように、国内で戦争反対の演説やデモをするだけで平和は実現できるでしょうか」「平和はつくり出すものであり、平和構築には具体的な行動が必要」などとイラク派兵反対の野党を攻撃しています。
この姿勢は、イラク戦争前に、問題の平和的解決をめざしてたちあがった全世界の反戦運動を「利敵行為」と敵視した姿勢と通ずるものです。
現在のイラク情勢の泥沼化は、なにより国連憲章を踏みにじった無法な戦争とそれにもとづく不法な占領をつづけている米英軍がもたらしたものです。それを容認、支持してきた公明党の立場はいまや完全に破たんしています。
公明新聞は「人道復興支援は世界の総意」などという見出しを掲げていますが、世界の総意は米英軍の占領支配を早急に終わらせ、国連の枠組みのもとでイラク国民に一刻も早く主権を回復させることです。逆に「安全確保支援活動」などと称して占領軍支援をおこなう自衛隊を派兵することは、こうした流れに逆行する以外のなにものでもありません。
まして、それを「平和構築のための具体的行動」などというのは、公明党が「平和の党」どころか「戦争の党」そのものであることを告白するものです。(F)