2003年12月16日(火)「しんぶん赤旗」
イラクを占領する暫定行政当局(CPA)のブレマー米文民行政官は十四日、首都バグダッドで記者会見し、米軍が捜索を続けていたイラクのフセイン元大統領(66)の身柄を十三日午後八時半(日本時間十四日午前二時半)ごろ、北部ティクリット近郊で拘束したと発表しました。米軍はフセイン氏をバグダッドへ移送し取り調べを始めています。
駐留米軍当局によると、米軍は十三日午前、元大統領の親族から潜伏場所の情報提供を受け、フセイン氏の故郷ティクリット南部のアッドワールにある農場を急襲、拘束しました。
イラク統治評議会メンバーは同日、拘束された元大統領と会見しました。評議会筋によると、元大統領はこのほど設置されたイラク人道犯罪特別法廷に起訴され、一九七〇年代からの独裁下で行った国民虐殺や隣国への戦争犯罪が裁かれるとしています。しかし、米国は誰が裁判を行うのか明言していません。
現地からの報道によると、拘束のニュースにバグダッド市民は祝砲を鳴らすなどして歓喜の声を上げました。一方で元大統領が占領軍に捕らえられ、さらし者にされたことに当惑する声もあると伝えられます。
ブッシュ米大統領は十四日声明を出し、「自由なイラクの建設に決定的」と拘束を歓迎。ただしテロリストからの攻撃は続くと述べ、占領と軍事作戦を続ける構えを示しました。これに対し、欧州やアラブ諸国からは、フセイン氏拘束をイラク人への早期の主権回復のきっかけとし、今こそ国連中心の枠組みの下に移すよう求める声が上がっています。
ブッシュ大統領は「暗黒の時代は終わった」などと述べ、イラクへの侵略戦争そのものを正当化しようとしています。しかし現地中東の識者からは、現在のイラク人の要求は占領の終結であり、「抵抗はフセインと結びついているのではない。(息子の)ウダイ、クサイ氏の殺害後にそうだったように抵抗は強まるだろう」(イエメンの政治アナリスト)という指摘も少なくありません。