2003年12月18日(木)「しんぶん赤旗」
日本共産党の佐々木憲昭政策委員長代理は十七日、年金制度「改革」の「与党合意」について談話を発表しました。
一、年金の「与党合意」は、大幅な負担増と給付減を押しつけ、国民の将来不安をいっそう増大させるものであり、とうてい容認できない。与党は50%の給付水準を維持するというが、これはあくまでモデル年金であり、月額五万円程度の国民年金の受給者など、大多数の低額年金も同様に、大幅な給付水準の引き下げをねらうものである。しかも、肝心の基礎年金への国庫負担二分の一への引き上げは先送りにし、その財源に定率減税の廃止と消費税増税をあてる道に踏みだそうというものである。
一、負担増も給付減もという今回の「与党合意」は、結局、現行制度の枠内だけでの議論の限界をしめすものである。日本共産党は、基礎年金への国庫負担を、国民への約束どおり来年度から二分の一に引き上げ、その財源は、道路特定財源の一般財源化など税金の使い方をあらためることでまかなう、約百五十兆円の年金積立金を計画的に活用すること、雇用と所得をまもる経済政策への転換をはかることをつうじて、当面、年金の給付水準をまもり、負担増を抑制するよう、あらためて要求する。さらに、だれもが掛け金なしで一定の年金額を受け取れる「最低保障年金制度」の創設をめざすものである。
厚生年金の保険料は三割以上増やす、給付は二カ月分減らす、基礎年金財源を口実に消費税増税を事実上組み込む――。年金「改革」の厚生労働省案発表から一カ月。政府・与党が迷走の末、ようやく出した結論は、国民に“三重苦”を押しつけ、将来不安を加速させる大改悪です。
政府・与党の協議で最後まで難航したのが、厚生年金の保険料をどこまで引き上げるかでした。
厚労省案が、現在の13・58%から20%に引き上げる(労使折半)としたのに対し、財界はこれまでの法人税の「減税効果を相殺する」(奥田碩・日本経団連会長)と猛反発。大企業の保険料負担を増やすことはまかりならんと対峙(たいじ)しました。これにあわてた政府・与党は、保険料上限の引き下げに動きました。
今回の年金「改革」に当たり、厚労省は“保険料収入の範囲内で年金を給付する”ことを基本方針としました。このため保険料の上限を引き下げると、厚労省案で現役世代の六割から55%程度(最低50%)に下げるとした給付水準がさらに下がり、50%すら割ってしまいます。
そこで与党は、給付水準「50%以上」を先に決め、これに見合う保険料のつじつま合わせに終始。その結果、出てきた数字が18・35%でした。
しかし、それは、厚労省の試算でも、少子化が進行し、経済が悪化すれば50%を割り込んでしまう危ういものです。
さらに試算は、基礎年金国庫負担の三分の一から二分の一への段階的引き上げを前提にしていますが、二兆七千億円の財源の大半は結論を先送り。試算の土台もぐらついているのです。
そもそも、50%の給付は「夫のみ四十年間就労、妻は専業主婦」という一部のケースにすぎません。共働きや単身者などは、三―四割台の給付に引き下げる計画です。
負担増・給付減に追い打ちをかけているのが、基礎年金の財源を口実にした消費税増税です。
来年度からの国庫負担二分の一への引き上げは法律でも決まっているのに、二〇〇九年度まで先送り。しかも、財源の一部として示したのは、年金受給者に対する増税です。
それでも、はるかに足りないとして、消費税増税につなげる狙いです。政府・与党は、「〇七年度を目途に、消費税を含めた抜本的税制改革を実現」と掲げました。
十四日のテレビ討論番組でも、与党の政策責任者は基礎年金の財源について問われ、「(年金、医療、介護の)抜本改革を行い、消費税を含めた財源の手当てを考えていく必要がある」(自民・額賀政調会長)、「社会保障全体の負担をどうするかという論議の中で消費税の問題というのは避けて通れない」(公明・北側政調会長)と歩調を合わせています。
保険料を上げるか、それがだめなら給付をもっと減らすかという今の政府の「改革」からは、国民の安心を支える年金制度の展望は開けません。
大企業を中心としたリストラのもと、厚生年金加入者(サラリーマン)は、一九九七年度から減少を続け、〇一年度は二百万人減の三千百六十万人です。こうした大企業の横暴を抑え、雇用と所得を守る政策に転換すれば、年金制度の安定した支え手を増やすことができます。
巨額の年金積立金の計画的活用、道路特定財源などを使って基礎年金の国庫負担引き上げを来年度ただちに実施することも必要です。
そうしたことには背を向け、国民に負担増と給付減、さらには消費税増税までのませようという自公政権のやり方は許されません。
(坂本健吾記者)