2003年12月19日(金)「しんぶん赤旗」
防衛庁長官がイラクへ自衛隊を派兵する実施要項をきめ、小泉首相が承認しました。
これをうけ十九日に、陸海空自衛隊に派遣準備命令を、航空自衛隊先遣隊に派遣命令を出します。
自衛隊が派兵されるイラクは、米英の占領下で戦闘状態がつづき、ますます混乱が激化しています。
小泉内閣は、米英の無法な戦争と軍事占領に加担して、戦地であるイラクに、憲法も国民の反対も踏みにじって派兵する重大な一歩を踏み出そうとしているのです。
自衛隊は年内から来年はじめにかけて、イラクとその周辺に次々に派兵されます。
実施要項は派兵時期を明示せず、首相の承認をうけて自衛隊を派遣することになっています。これは、イラクの情勢が先行き不透明であり、安全を確保する保証もないことを示すものです。
イラクではフセイン元大統領拘束後も、米軍の作戦と暴力の応酬が激化しており、イラク特措法のいう「非戦闘地域」などないことが、さらに明白になっています。米英軍の侵略戦争と占領支配がイラク国民の怒りと憎しみをよびおこし、暴力とテロの土壌を広げています。
小泉内閣が自衛隊をイラクの戦場に送り、占領支配に加担することは、自衛隊を米軍とともに怒りと憎しみの対象にすることです。首相が「人道復興支援」だと強弁してみせても、自衛隊が米軍の戦闘の道連れにされることは避けられません。
自衛隊が「人道復興支援」だけでなく、「安全確保支援活動」で米軍を支援する重大さは、とりわけ重武装した米軍の部隊を輸送することに示されます。
実施要項は米軍の武器・弾薬の輸送はしないとしていますが、防衛庁長官は日本共産党の小泉親司参院議員の追及に、自衛隊が輸送する米兵の武装には対戦車弾や迫撃砲も含まれるとし、「上限を明らかにできない場合もある」と答弁しました。
米軍がどんな重火器で武装していても、自衛隊がそれを戦場に運ぶというのは、米軍の戦闘を支援し参戦することにほかなりません。
日本が他国の領土で他国民の殺害に手を貸す事態が、武力の行使や武力による威嚇を禁止した日本国憲法を乱暴に踏みにじるものであるのは明白です。
小泉首相は派兵の基本計画決定に際しての記者会見で「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」という憲法前文の一節を引いて、この憲法じゅうりんのくわだての正当化をはかりましたが、これほど無節操で無責任なことはありません。
自衛隊のイラク派兵は、国連憲章にもとづく世界の平和秩序を破壊し、戦争と抑圧の秩序を世界に押しつけるブッシュ政権の野望に追随したものであり、これこそ他国を無視する露骨な覇権主義への加担です。
イラク派兵計画が、圧倒的多数の日本国民の意思に逆らうものであることは、どの世論調査の数字にも示されています。
自衛隊関係者からも、夫を息子を戦場に送らないという声があがっています。
イラクをはじめ中東・アラブの諸国民からも、日本の復興人道支援は歓迎するが、自衛隊はいらないという声があがっています。
「イラク派兵やめよ」の声をさらに広げて、歴史的暴挙をなんとしてもくいとめようではありませんか。