2003年12月19日(金)「しんぶん赤旗」
福田康夫官房長官が言及した「武器輸出三原則」の見直しは、「ミサイル防衛」システムの装備品について日米の共同開発・生産に道を開く狙いをもっている点で、きわめて重大です。
「武器輸出三原則」の形がい化の動きは、一九八三年、当時の中曽根内閣が米国への武器技術の供与を決定して以降、強まっていました。携行用地対空ミサイルをはじめ、すでに十三件の対米武器技術供与を決定。さらに、「日米装備・技術定期協議」といった日米の軍事技術交流も加速していました。
しかし、今回は、武器の対米技術供与から、米国との共同開発・生産に初めて踏み出そうとしているのです。
米国防総省ミサイル防衛庁の予算計画書には、(1)「ミサイル防衛」用のスタンダードミサイル・SM3の強化に焦点をあてた日本の防衛庁との共同開発を継続する(2)二〇〇五〜〇六米会計年度に、改良されたノーズコーン(ミサイルの先端部分)の発射テストを行う(3)将来の共同開発を計画している─ことが明記されています。
現在、「ミサイル防衛」の共同技術研究には三菱重工をはじめ、国内の主要軍需企業が参加。防衛庁と契約を結んで、「海上配備型ミッドコース防衛システム」の試作に参加し、ノーズコーンなど四つの部品の試作を請け負っています。同システムは、米ミサイル防衛庁の予算計画書が挙げている「SM3」と同じものです。日米が共同開発・生産したミサイルなどは当然、米国から第三国に輸出されることになります。
米国が進める地球的規模での「ミサイル防衛」システムは、ブッシュ米政権の先制攻撃と一体のもので、相手国の反撃すら許さない、核兵器を含めた圧倒的な軍事体制を保障するものです。「武器輸出三原則」の見直しは、こうしたシステムのために日米が共同開発・生産した装備品が世界に出回るという事態に道を開くことになります。
それは、「武器輸出三原則」を完全に形がい化し、憲法の平和原則を踏み破るものです。(竹下岳記者)