2003年12月20日(土)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 こんどの気候変動枠組条約の会議でほぼ固まったという、京都議定書の運用ルールとはどういうものですか。(東京・一読者)
〈答え〉 今年十二月、イタリアのミラノで気候変動枠組条約の第九回締約国会議(COP9)が開かれました。最大の温暖化ガス排出国アメリカが批准を拒否しているもと、ロシアも未批准のため京都議定書の発効は遅れていますが、議定書の運用ルールで積み残されていた問題が最終合意されました。
一九九七年に採択された京都議定書は、主な工業国が二〇〇八年〜一二年の間に達成すべき温暖化ガス排出削減の数値目標を定めています。日本は九〇年の排出水準から6%削減です。同時に、議定書には、温暖化ガス削減に消極的なアメリカや、米と自国の財界に気がねした議長国日本などの主張で、▽温暖化ガスの削減量に、植林などによる「森林吸収」も算入する制度▽他国と協調して他国で達成した削減を、自国の排出枠に加算する「京都メカニズム」─などが導入され、その運用ルールの確定が課題となりました。
これらの制度は温暖化の主要原因から目をそらすものであるため、交渉は難航し、二〇〇一年にモロッコのマラケシュで開かれた第七回締約国会議(COP7)で、「森林吸収」の定義や「排出権取引」の実施方法などの主要な運用ルールを確定する法的文書(マラケシュ・アコード)が採択されました。
今回のCOP9まで交渉が続いたのは、「京都メカニズム」の一部である「クリーン開発メカニズム(CDM)」の問題でした。温暖化ガスの数値目標が設定されていない途上国内で、排出削減や吸収増大をもたらす事業に協力した工業国が、自国の温暖化ガス排出枠を獲得する制度です。今回の合意で議定書の運用ルールが整ったこと自体は、おおむね前向きに受け止められていますが、「遺伝子組み換え樹木」や「モノカルチャー植林」もCDMの対象とされたことによる、新たな乱開発も懸念されています。
(博)
〔2003・12・20(土)〕