2003年12月21日(日)「しんぶん赤旗」
二十日に内示された二〇〇四年度軍事費(防衛関係費)の財務省原案は、総額四兆九千二十八億円です。今年度予算に比べ五百二億円の減(1・0%減)になりました。「過去最大の削減幅」と宣伝されていますが、第二の軍事費である情報収集衛星(軍事偵察衛星)関連経費六百三十二億円(内閣官房予算)を加え、五兆円規模の聖域扱いに変わりはありません。しかも、内容は、イラク派兵関連経費や「ミサイル防衛」導入経費、海外派兵型装備の調達を盛り込んだ危険なものになっています。
小泉純一郎首相は、今回の軍事費財務省原案について、新規の大型装備を調達しながら、総額を減少させたことに「考えられないすごいこと」(十九日)と高く評価しました。しかし、減額できた理由について財務省は「大きいのは人件費の削減だ」と説明しています。
既存装備では、五百四十二億円を削減したとされていますが、着上陸侵攻を想定した90式戦車を新たに十五両(百二十一億円)調達するなど、ムダ遣いに変わりはありません。
政府・防衛庁は、〇四年度末までに、新たな「防衛計画の大綱」と中期防衛力整備計画(中期防)を策定することを決めています。これは、日本を米国の先制攻撃戦略に深く組み込む「ミサイル防衛」と、海外派兵に重点を移そうというものです。
調達する装備の内容をみると、この動きを先取りする形になっています。石破茂防衛庁長官は、会見で「考え方として、(新中期防を)反映したものになっている」(二十日)とのべています。
今回初めて盛り込まれた「ミサイル防衛」システムの導入経費は千六十八億円。一隻のイージス艦に新型スタンダード・ミサイル(SM3)、航空自衛隊の一高射群に新型パトリオット・ミサイル(PAC3)を配備する計画です。
八月の防衛庁の概算要求に比べ、三百五十五億円の減額ですが、財務省は「米側との価格交渉と円高によるもの」と説明します。計画に変更はありません。
海外派遣型装備の調達では、ヘリコプター搭載護衛艦一隻(千五十七億円)が盛り込まれました。同護衛艦は、インド洋での米軍支援などの海外活動を想定。「実質的には『護衛空母(CVE)』もしくは『ヘリ空母(CVH)』と呼ぶのが適切かもしれない」(防衛庁の準広報紙「朝雲」九月十八日号)と指摘されています。
戦闘機の海外遠征を可能にする三機目の空中給油機も、戦闘機による対地攻撃能力を高める精密誘導爆弾も計上されています。