2003年12月21日(日)「しんぶん赤旗」
国民に痛みを押しつけてきた小泉「構造改革」を「いっそう推進する」(予算編成の基本方針)との方針のもとで編成された来年度予算財務省原案。文字どおり国民のくらしにいっそうの痛みを押しつける項目が目白押しです。(山田英明記者)
|
社会保障 |
複数年の自動負担増 |
社会保障費は本来、高齢者の人口増加などとともに増えていきます。来年度のこの増加分は九千百億円。原案では、物価スライドの実施による年金給付の削減や生活保護の老齢者加算の段階的廃止などで、この社会保障の自然増分を八千四十億円に圧縮することを盛り込みました。
負担増は、これだけではありません。六十五歳以上の高齢者の税負担を軽減してきた老年者控除を廃止することや、公的年金等控除の縮小が税制「改正」に盛り込まれています。来年から配偶者特別控除が廃止されることも決まっています。
見過ごせないのは、これらの負担増が、単年度で終わるのではないことです。年金保険料率の毎年引き上げや年金給付額の物価スライドのように、複数年にわたって自動的に負担がふえる仕掛けになっています。
地方自治 |
1兆円の補助金削減 |
国と地方の税財政の「三位一体の改革」の一環として、一兆円の補助金を削減することも原案の「目玉」です。
原案には、義務教育国庫負担金の退職手当や公立保育所運営費の一般財源化などが盛り込まれました。
一般財源化とは、使い道を限定しないということ。これでは国庫補助負担金の八割を占める福祉や教育の切り捨てにつながります。
ムダ事業 |
コスト減だけで温存 |
では、国民が求める無駄に大胆なメスが入れられたのか。「メリハリで効率的配分をした」と谷垣禎一財務相は胸をはります。
たしかに公共投資関係費は3・3%カットが盛り込まれました。しかし、その内実は事業量を減らすのではなく、「コスト縮減で」(原案のポイント)というのが本音です。
一方、重点化したのは、大都市圏拠点空港(三割増)や「都市再生」を名目にした「まちづくり交付金」など、新たな大規模開発型公共事業です。
軍事費では、「ミサイル防衛システム」の整備として一千六十八億円を打ち出し、また、イラクへの自衛隊の派遣経費として百三十五億円も盛り込まれています。
税収は… |
大企業減税で空洞化 |
押し付けられた痛みによるくらしの冷え込み、長引く不況による経営難が税収を悪化させています。さらにこれまでの法人税減税がこれに拍車をかけています。
〇四年度は、歳出が八十二兆円になる一方、税収は四十一兆円(政府見とおし)となり、国債発行額は三十六兆五千九百億円と過去最高規模に達します。
財務省の概算では、来年度税制「改正」による年金課税の強化で国民に三百九十億円の増税が押し付けられます。その一方で、法人課税の減税は五百三十億円です。
こうして税収の空洞化にさらに拍車をかけ、国民のための予算を削っていくのが原案の示す方向です。そして、「これ以上削れない」と悲鳴をあげさせ、財源がないからと消費税率の引き上げへの道筋をつけようというのが小泉政治の作戦です。
|
消費税増税まっしぐら | 財界シナリオ反映 |
財界が消費税増税と憲法改悪を求めています。総選挙では自民党と民主党を競わせ、両党を消費税増税に踏み込ませました。軍拡の問題でも、日米の軍需会社の後援で自民党と民主党の「国防族」が軍事戦略などについて話し合うところまで事態は進んでいます。
社会保障を抑制し、大企業負担を減らしながら、その負担を消費税増税に求めるのが財界のもっぱらの方針です。
原案は、こうした財界のシナリオを忠実に反映し、その道筋を明確に示しました。
いま必要なのは、財界・大企業本位の予算ではなく、国民のくらし応援を最優先する予算です。必要のない公共事業や軍事費など、予算のムダを改めれば、消費税増税に頼らなくても社会保障の財源を確保することができます。日本共産党は国民本位の予算編成を強く求めています。
日本経団連の奥田碩会長「消費税を2007年までに10%、2025年までに18%と段階的に引き上げる」(奥田碩日本経団連会長、自著『人間を幸福にする経済』) 「変化への対応が遅過ぎる。(略)憲法改正問題も同様だ」(奥田碩日本経団連会長、『文芸春秋』04年1月号) 経済同友会の北城恪太郎代表幹事「消費税率を、最終的に(2020年度以降)20%未満(19%)に」(経済同友会の2月の提言) 「経済同友会は、かねてより、集団的自衛権の行使に関する政府見解の早期見直しに加え、第9条を含む憲法改正を提言してきた」(北城恪太郎経済同友会代表幹事、12月9日、イラクへの自衛隊派兵決定での談話) |