2003年12月21日(日)「しんぶん赤旗」
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一般会計(歳入) |
来年度の税収見積額は四十一兆七千四百億円で、今年度比で0・1%減少しました。歳入総額八十二兆一千百億円に占める税収割合は、過去最低の50・8%と、政府が財政規律を維持するためとして設定した五割ラインぎりぎりのところまで落ち込みました。歳入の八割以上を税収で賄うことができた一九九○年前後とは雲泥の差です。
歳出と税収のギャップを埋める国債発行額は、当初予算案としては過去最高の三十六兆五千九百億円。国債依存度も今年度と同じ44・6%で史上最悪の状態が続いています。
小泉内閣が二○○一年四月の発足時に掲げた国債三十兆円枠の公約は○二年度に早くも破られています。
政府・与党は来年度税制「改正」で、高齢者の年金課税強化に踏み切りましたが、財界・大企業の要望を受け入れ、法人税減税などを決定。税収は今年度比で純減となります。
一般会計(歳出) |
社会保障 |
社会保障関係費は前年度比4・2%増の十九兆七千九百四十七億円。年金制度改悪による保険料の引き上げなど、国民に新たな負担増、給付減を求める予算となっています。このため自然増で九千百億円増になるところを、千五十三億円圧縮して、八千四十七億円増としています。
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厚生年金の保険料は、来年十月から毎年0・354%の引き上げ(労使折半)が盛り込まれました。これが実施されると、年収四百五十万円のサラリーマンの場合、年間ベースで七千九百六十五円の負担増になります。厚生年金の保険料全体で約二千五百億円の負担増(半年分、労使合わせて)となります。
給付についても、現役世代の平均収入の50%まで段階的引き下げ(現行は59%)が計画されています。しかも、経済情勢の悪化に少子化の深刻化が重なると、さらに給付水準が低下する仕組みを導入するため、厚労省の試算でも45・5%まで下がることが見込まれています。
厚生年金受給者には、これに加えて、基礎年金国庫負担引き上げの「財源」として、年金課税の初年度増税分二百七十二億円の負担(平年度は約千六百億円)が加わります。
年金給付の物価スライド制適用による削減は、二年連続で実施され、0・2〜0・3%の引き下げです。月二十三万六千円を受給する厚生年金モデル世帯(夫婦二人、四十年加入)の場合、年間五千六百〜八千五百円の給付減。国民年金の満額受給者(夫婦二人で十三万二千七百円)も、年間三千円から四千七百円の給付減です。
生活保護費では、七十歳以上の人に支給される老齢加算(最高額で月一万七千九百三十円)を三年間で段階的に廃止し、初年度は百六十七億円削減(平年度は三百三十七億円)します。扶助基準などについても、〇三年度に続いて物価スライドに連動させて、0・2%引き下げようとしています。
軍 事 費 |
軍事費(防衛関係費)は、今年度予算より五百二億円減(一・〇%減)の四兆九千二十八億円。内閣官房予算である情報収集衛星(軍事偵察衛星)関連経費六百三十二億円(十二億円減)を加えると、四兆九千六百六十億円に達します。
初導入の「ミサイル防衛」システムの関連経費には、千六十八億円(日米共同技術研究経費七十六億円を含む)を計上。イラクに派兵する自衛隊の活動経費として、百三十五億円を盛り込みました。
海外派兵型兵器としてヘリコプター搭載護衛艦一隻(千五十七億円)、空中給油機一機(二百四十億円)などを計上。精密誘導爆弾の経費(新規)として、十億円を盛り込んでいます。
沖縄の米軍基地のたらい回し・強化の日米特別行動委員会(SACO)関連経費は、一億円増の二百六十六億円。このうち、名護市辺野古沖に米海兵隊の新基地を建設するための環境影響評価費などとして十九億円。浦添市に新軍港を建設するための工事工程の検討として二千万円を計上しています。
在日米軍駐留経費の日本側負担である「思いやり予算」は、二千四百四十一億円(十九億円減)。内訳は、労務費千四百三十億円、光熱水料費二百五十八億円、訓練移転費四億円、提供施設整備費七百四十九億円です。
O D A |
ODA(政府開発援助)予算は八千百六十二億円。五年連続の減額ですが、削減幅は4・8%で、今年度の5・8%を下回りました。
無償資金援助のうち、緊急無償枠をイラク復興支援を中心に三百十七億円(今年度当初二百二十二億円)へ大幅に増額しました。イラク復興支援では、今年度の当初予算と補正予算案も加え、来年に計十五億ドル(約千六百五十億円)を拠出します。無償資金援助全体は3・8%の減額です。
また国際機関への出資・拠出金は6・9%減、円借款は6・8%減としましたが、ドル換算の予算規模は今年度水準を維持するとしています。
公共投資 |
公共投資関係費は、今年度当初予算比3・3%減の八兆六千百四十九億円です。小泉内閣が推進する「都市再生」路線のもとで、大都市圏に集中する一方、国民の生活関連が削減されているのが特徴です。
大都市圏拠点空港は三割増の八百七十九億円を盛り込みました。騒音問題や飛行ルートの安全確保、環境悪化などの課題が山積している羽田空港再拡張事業は百七億円を計上し、〇四年度の着工を強行します。滑走路整備事業費は総額約六千九百億円。国が東京都などの地方自治体から約千三百億円の無利子貸し付けを受けるという“逆転”方式ともいうべきやり方を導入し事業を推進します。財政難の自治体にとっては新たな負担増です。関西国際空港の二期工事も引き続き進めます。
道路整備は、維持修繕費や地域連携推進のための予算などを削減する一方で、東京、名古屋、大阪の三大都市圏環状道路の整備には、8・5%増の二千百三十七億円を計上しました。
道路特定財源は、社会保障の財源確保のために一般財源化が求められているにもかかわらず、本州四国連絡橋公団の赤字補てんのために三千四十九億円も投入します。
また、道路公団民営化後の新会社が建設しない不採算路線について、国と自治体の負担による「新直轄方式」で建設する予算も計上しています。
整備新幹線は、六百八十六億円。主に整備するのは、新青森−八戸、長野−冨山、石動−金沢、博多−新八代などです。
「三位一体改革」の名で地方向け補助金を削減する一方で、「まちづくり助成金」を創設。千三百三十億円を計上しました。「都市再生」を掲げて地方都市での駅前再開発を推進する狙いです。
住宅対策については、公営住宅の用地費にかかわる補助の削減をおこないます。特定優良賃貸住宅については新規補助を限定。住宅金融公庫は、融資戸数を今年度三十七万戸から二十二万戸に一挙に四割も削減します。
大企業・大銀行 |
預金保険機構に対する政府保証枠(公的資金投入枠)は、合計で五十九兆千五百億円(今年度当初比2・1%増)です。今後も国民の税金を使った大銀行救済の枠組みを維持・拡大していく考えです。
りそな銀行に注入した約二兆円の公的資金が毀損(きそん)した場合に備え、「危機対応勘定」を二兆円増額しています。
また、破たん前の金融機関に対し「予防的」に公的資金を注入する新制度の財源として、二兆円の「金融機能強化勘定」(仮称)が設定されました。新制度はおもに大手行以外の地域金融機関を対象にしたものとみられ、合併・営業譲渡など抜本再編に際して使う場合に加え、自己資本比率が単体で「健全性基準」(国内業務行4%)を下回る金融機関にも適用されます。
一部大企業のために「産業競争力強化」の名で、実用化直結の技術開発へ補助金をばらまきます。次世代ロボット実用化プロジェクトに三十一・三億円、バイオプロセス実用化開発プロジェクトには二十六・一億円と巨費を新規で計上しました。
中小企業 |
中小企業対策費は、前年度より二十六億円(1・5%)減の千七百三億円(経済産業省分千二百七十億円、財務省・厚生労働省分四百三十三億円)です。
一般歳出に占める比率は0・36%、一般会計総額への比率は0・21%。いずれも中小企業企業基本法制定後、二〇〇三年度と同水準の史上最低です。日本企業の99%超を占める中小企業への位置付けを欠くあまりにも少ない予算額です。
地域産業集積活性化法にもとづき地域中小企業群を支援する「地域再生産業集積対策事業」を、「三位一体改革」と称する予算削減のなかで、全額一般財源化。地方向け補助金を18%削減しました。
中小企業をつぶす不良債権処理策を強行する一方で、地域中小企業を支援するとして、「中小企業再生支援協議会事業」に二十六・七億円(前年度比八・二億円増)を計上しました。
世界に通じる中小企業のジャパンブランド育成支援事業については、新規要求はしたものの“ゼロ回答”でした。
「商人塾」やチャレンジショップへの運営支援など、商店街の中小商業活性化総合支援として三十七・〇億円(同四・六億円増)を盛り込みました。
農 業 |
農林水産関係予算(一般会計分)は、前年度当初予算比2・3%減(七百九億円減)の三兆四百五億円。その内訳を示す三分野の一つ、「公共事業関係費」は、同4・6%減の一兆三千七百十二億円。これは、農林水産関係予算全体の45%を占め、相変わらず同予算の半分近くにのぼっています。
このほかの二分野では、「食料安定供給関係費」が同2・4%減の六千七百十三億円、「一般農政費」は同1・2%増の九千九百八十一億円となっています。
来年度は、減反を厳しくして家族経営の零細農家を切り捨て、大規模農家に政府助成を集中する「コメ政策改革」実施の初年度。この「改革」関係予算(一般会計分と食糧管理特別会計分の合計)の「産地づくり対策」費として、概算要求と同額の千六百五十一億円を計上しています。
農業委員会交付金は同6・9%減(二十八億円減)としています。
地方財政 |
地方財政では、「一兆円の補助金改革」として国が責任を負う義務教育や公立保育所にたいする義務的経費を国庫負担金から一般財源に切り替えます。
義務教育費国庫負担金の退職・児童手当二千三百九億円を来年度は「税源移譲予定交付金」とし、公立保育所運営費千六百六十一億円は一般財源化します。
国庫補助負担金の一般財源化にともなう税源移譲(暫定措置として所得譲与税)は、義務教育国庫負担金の共済費など今年度実施分とあわせて四千二百億円程度にとどめ、削減分と差し引き七百億円分は事業費を圧縮する方針です。
義務教育や公立保育所などにたいする国の責務を後退させるもので、地方自治体と住民に負担を転嫁し、住民サービスの低下につながりかねません。
地方の歳入不足を国が補てんしている地方交付税は、今年度より一兆一千八百億円程度の減(前年比6・5%減)で、臨時財政対策債も一兆六千八百億円減です。地方交付税の削減をねらう方針の具体化に踏み出したもので重大です。
同時に今回の削減についてみると、公共事業などの地方単独事業を一兆四千百億円削減するなど、地方財政計画を一兆五千四百億円削減する一方、地方税や譲与税、交付金など一兆七千億円ほどの歳入増を見込んでいるためです。
文 教 費 |
文部科学省のうち文教関係費は前年度比四千二百十七億円(8%)減の四兆八千百九十七億円で大幅削減となっています。
減額分の半分超を占めるのが、義務教育費国庫負担金のうち、教職員の退職手当と児童手当の合計二千三百九億円の削減(交付金として地方財源に)です。“補助金一兆円削減”の対象となり、文教予算から除かれました。補助金削減では、公立文教施設整備費も百四十一億円の減額です。
少人数指導などのために文科省が要求していた公立小中学校の教職員五千三百八十人の増員要求にたいし、九百八十人が認められませんでした。
私学助成では、大学への経常費補助は前年度と比べて五十五億円減となっています。高校などへの経常費補助も、前年度比二十五億円減の九百七十六億円で要求額を大きく下回っています。
来年四月に移行する国立大学法人の運営費には、国会での付帯決議をふまえて、法人化前の今年度予算とほぼ同額の一兆三千百七十四億円を確保しました。
来年度スタートの国立法科大学院の授業料(標準額)は、概算要求の七十八万円から八十万四千円へ引き上げるものとなっています。
日本共産党の国会議員団も要求していた学校施設の耐震化は、前年度比六億円増の千百五十五億円が盛り込まれました。
科学技術 |
文部科学省の科学技術振興費は今年度当初比3・3%増の一兆二千六百九十九億円で、他分野に比べ大きな伸びとなっています。
南米チリに欧米と共同で最高性能の電波望遠鏡を建設する「アルマ計画」に十億円、日本が世界をリードするニュートリノ研究の実験施設に六億円が認められました。
第三次対がん十カ年総合戦略や先端計測分析技術・機器開発など、経済活性化に直結する研究プロジェクトには、計千二十億円を内示。今年度当初比38%増となりました。
雇 用 |
増加するフリーターなど若年者対策や長期失業者対策を目玉にしています。しかし、その内容の多くは民間頼みです。
若年者対策では、「教育段階から職場定着に至るキャリア形成・能力向上・就職支援」(千六百十億円)を掲げています。職場体験や企業実習の実施をします。「若年労働市場の整備」(百五十九億円)では、民間教育訓練機関の事業拡大に期待。「新たな市場・就業機会の創出」(五百四十四億円)ではベンチャー企業の増加や国立大学の法人化などによる新ビジネス創出に期待しています。
若者が雇用関連のサービスを一カ所で受けられるワンストップサービスセンターでは、「地方公共団体、関係省庁の施策が集約されることにより、効果的な就職支援が実施される」とうたい、八十億円をつけています。
長期失業者の就職支援では文字通り民間事業者への失業者の「丸投げ」です。就職支援や職業訓練を民間人材会社などに委託し、何人就職させたかなどその成果で委託費を支払います。
財投計画 |
二○○四年度の財政投融資計画の財務省原案は総額二十兆四千八百九十四億円と、今年度比12・5%減少しました。五年連続の減額で、財投「改革」着手前の一九九九年度のほぼ半分となりました。八月の要求段階で18・5%の伸びとした地方向けを大幅に圧縮、5・7%減の八兆七千億円まで絞り込んでいます。
地方向けは、地方自治体が過去に減税財源として発行した減税補てん債を借り換える必要から、一兆七千二百億円の増加要因を抱えていました。しかし、自治体に公募債の発行や民間金融機関からの借り入れなどの資金調達を促すことで財務、総務両省が合意。このため、財投資金による地方債引き受けの大幅削減となりました。
政府系金融機関では、住宅金融公庫向けが今年度比93・0%の大幅減。特殊法人「改革」の流れに沿った直接融資枠の縮減のほか、金利上昇を見越した繰り上げ返済の増加を見込んだためとしています。
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