2003年12月23日(火)「しんぶん赤旗」
小泉内閣が、「弾道ミサイル防衛システム」導入をきめました。
それも、現行「防衛計画の大綱」に代わる新たな大綱を来年末までに策定するという軍事政策の転換と一体のものとして打ち出しました。
ブッシュ米大統領は、小泉内閣がこれを発表した直後の首相との電話会談で、一連の対米支援に謝意を表明し、首相は日米同盟が日本にとって最も重要だと強調しました。
政府は官房長官談話で、ミサイル防衛を「わが国の防衛が目的」「主体的判断で運用する」と強調しました。民主党のように「専守防衛」だとして是認する議論もあります。いずれもミサイル防衛の実態に反する誤った主張です。
ミサイル防衛は、米国防報告が「アメリカの優位が前提」というように、相手のミサイルを無力化することで米核戦略の優位を絶対的なものにし、報復を心配せずに他国を先制攻撃できるようにするものです。
ブッシュ政権は「大量破壊兵器に対抗する」などとして、核兵器による先制攻撃も辞さない戦略をとっており、アメリカ独断で武力攻撃する単独行動主義とともに、ミサイル防衛をその重要な柱にしています。
日本がミサイル防衛を導入するのは、アメリカのミサイル防衛網に日本を組みこむことです。それは、発射されたミサイルを探知するのが、米軍の偵察衛星頼みであること一つを見ても明らかです。
小泉首相は五月の日米首脳会談で、自衛隊のイラク派兵とともに「日米同盟の信頼性強化になる」としてミサイル防衛参加を約束しました。八月の防衛白書は米軍の戦争を支援する「有志連合」に参加する自衛隊の役割を強調し、ミサイル防衛参加の「検討を加速」としました。
小泉内閣は、日本の安全を守るという日米安保条約の建前もかなぐりすて、日本をアメリカの先制攻撃戦略に組みこみ、米軍の絶対的優位のための軍事計画に加担するという重大な一歩を踏み出したのです。
だから、これに対してアジア各国から「日本が先制行動をとろうとしている」(中国国防報)、「周辺国を憂慮させる」(シンガポールのストレーツ・タイムズ紙)と批判や警戒の声があがっているのです。
小泉内閣の決定は、ミサイル防衛が核軍拡になる点でも重大です。
中国、ロシア、ヨーロッパ諸国など世界の大多数の国々は、ミサイル防衛に強く反対しています。
それが際限のない核兵器の開発競争を進めることになるからです。
ブッシュ政権がミサイル防衛を進める一方で、小型核兵器の開発など核戦争態勢の強化をはかっているのも、核戦争の脅威を大きくするものとして軽視できません。
日本は核兵器の残虐な体験をした唯一の被爆国であり、憲法で戦争の放棄を定め、世界平和の先頭にたつことを誓った国です。
その日本が、アメリカの核先制攻撃戦略に加担し、世界の国々と対抗する国になるなど、どうして許せるでしょうか。
ミサイル防衛への参加は、一兆二千億円から五兆九千億円かかると試算されている大軍拡です。
ミサイル防衛導入は、世界の平和を損なうとともに、国民のくらし破壊につながっています。
平和とくらしを守りぬくために、自衛隊のイラク派兵反対とあわせて、ミサイル防衛導入反対の世論を広げてゆこうではありませんか。