日本共産党

2003年12月25日(木)「しんぶん赤旗」

大企業優遇、生活破壊の小泉予算

来年度政府案


年金改悪…国民に負担増

一般会計歳出

社会保障

表

 社会保障関係費は今年度比4・2%増の十九兆七千九百七十億円。自然増で九千百億円増になるところを一千億円以上圧縮し、厚生年金の保険料値上げ、年金、生活保護、児童扶養手当の給付切り下げなど国民に負担増・給付減を強いる内容です。

 厚生年金の保険料は制度改悪により、来年十月から毎年0・354%の引き上げ(労使折半)を計画。給付についても、現役世代の平均的収入の50%への段階的引き下げ(現行は59%)を狙っています。

 物価スライド制による給付引き下げは、年金、生活保護、児童扶養手当で二年連続で実施され、0・2−0・3%の引き下げ予定です。

 生活保護費では、七十歳以上の人に支給する老齢加算(一級地の一で月一万七千九百三十円)を三年間で段階的に廃止する方針を盛り込みました。〇四年度九千六百七十円、〇五年度三千七百七十円に減らし、〇六年度にはなくす計画です。

 障害者小規模通所授産施設の運営費補助金単価は前年度の千百万円から千五十万円に削減。小規模作業所に対する助成も一割カットしています。

 診療報酬・薬価等改定は薬価・材料費部分が0・1%引き下げられ、医療費国庫負担に与える影響額はマイナス七百十七億円です。

 医師臨床研修の補助金は今年度の四倍増の百七十一億二千万円。日本共産党の国会質問と医学生の運動が実りました。

 医療保険が適用されない不妊治療の費用助成のため新たに二十五億四千万円を計上。救急医療対策推進の予算は総額十一億七千万円減ですが、小児救急医療体制の整備は三億六千万円増の十七億三千万円となっています。児童手当国庫負担金は支給年齢の小学校第三学年修了までの引き上げ(現行は就学前)などにより千五十億七千万円増です。

競争力強化の事業を推進

大企業

 主に大企業向け補助金である来年度の産業技術関連予算は、今年度比1・8%増の六千二百二十六億円を計上しました。企業の競争力強化に直結するプロジェクト「フォーカス21」には四百二十九億円を盛り込みました。次世代ロボット実用化プロジェクトや次世代ロケット基盤プロジェクトなど三十九の事業を推進します。

 産業界主導の「産学連携」を推進するために、百十二億円を計上。「大学発ベンチャー千社計画」などを加速化します。

 大企業の海外展開強化のための「東アジアビジネス圏」の形成にむけて、貿易・投資にかかわる制度・ルールの整備を進めます。また、対日直接投資の拡大をはかるため外国企業誘致を支援する「対内直接投資推進事業」には九億七千万円を計上しました。

公的資金投入枠59兆円に

大銀行

表

 金融機関の破たんに際して一定の限度額まで預金を保護する制度を運営するなどの機能を持つ預金保険機構。同機構に対する政府保証枠(公的資金投入枠)は計五十九兆千五百億円(今年度当初比2・1%増)となり、公金を使った大銀行救済の枠組みに変化はありません。りそな銀行に投入した二兆円の公的資金に穴があいた場合に備え、「危機対応勘定」を二兆円増額しました。

 金融機関への予防的な公的資金投入を想定し、「金融機能強化勘定(仮称)」二兆円を新たに設定しました。同勘定は、合併・営業譲渡や経営改善を目指す破たん前の金融機関に対しても適用し、主に地域金融機関を対象にします。

 復活折衝では、公認会計士や監査法人に対する監督体制を強化するため、「公認会計士・監査審査会」の事務局四十人の採用を認めました。

民間委託と自主管理

雇用

 ハローワーク(公共職業安定所)の求職活動でも就職できなかった一年以上の長期失業者について、「就職支援から就職後の定着指導」までを民間事業者に「包括的に委託」(丸投げ)する事業(新規)を大都市圏で実施します。

 若年者を対象とした新たな人材育成システムとして、企業実習と一体となった教育訓練・能力評価をおこなう「実務・教育連結型人材育成システム(日本版デュアルシステム)」(新規)を、当面は学卒未就職者や急増するフリーターを中心におこないます。

 長期失業やフリーター急増の原因である大企業のリストラ・人減らし、それを促進する小泉「構造改革」はそのままに、過労死対策などでは「労使による自主的取組の促進、労働者自身の健康管理」を強調しています。

 失業対策費は、今春の雇用保険制度改悪による給付の大幅削減で国庫負担分も減り、今年度当初比7・9%減の五千三百七億円としました。


大都市拠点空港は3割増

公共投資

 公共投資関係費は今年度当初比3・3%減の八兆六千百四十九億円です。大都市圏での大企業本位の開発を進め環境破壊など都市問題を深刻化する「都市再生」路線を推進。大都市圏の空港、道路、港湾整備など大型事業を重点化する一方、暮らしを支える事業を切り捨てています。

 大阪、名古屋、首都圏の三大都市圏環状道路の整備は今年度比6・7%増の二千二百四億円計上。一方、地方道への補助事業は、空港・港湾への接続などに事業を重点化しつつ全体として抑制。また、地方道の舗装補修事業を廃止します。

 道路特定財源は、社会保障財源確保のために一般財源化が求められているにもかかわらず、本州四国連絡橋公団の赤字の穴埋めのため来年度は三千四十九億円の血税を注ぎ込みます。道路公団民営化後の新会社が建設しない路線を「新直轄方式」で建設するため千三百億円を計上しています。

 大都市拠点空港の整備には今年度比三割増しの八百七十九億円を計上しました。騒音問題や飛行ルートの安全確保など課題が山積している羽田空港再拡張事業は百七億円を盛り込み、来年度の着工を計画しています。関西国際空港の二期工事も推進します。中枢国際港湾の整備には同7・3%増の八百四十二億円を盛り込みました。

 「三位一体改革」の名で地方向け補助金を削減するなか、「まちづくり交付金」を創設します。千三百三十億円を盛り込みました。「都市再生」の名で地方都市の駅前再開発などを進めます。

 住宅金融公庫は、融資戸数を今年度三十七万戸から二十二万戸に削減します。

国庫負担金1兆円を廃止

地方財政

表

 地方財政では、「一兆円の補助金改革」として教育や福祉を守るために国が責任を負っている国庫補助負担金を廃止し、一般財源化します。

 義務教育費国庫負担金の退職・児童手当を来年度は「税源移譲予定交付金」とし、公立保育所運営費千六百六十一億円は一般財源化します。

 義務教育や公立保育所などへの国の責務を後退させるもので、自治体と住民に負担を転嫁し、住民サービスの低下につながりかねないものです。

 補助金全体で一般財源化で影響を受けるのは四千七百四十九億円。これに応じた税源移譲は、公立保育所運営費などの負担金分をあわせた四千二百四十九億円です。残りは地方交付税等で措置されます。

 地方の歳入不足を補てんする地方交付税は、今年度より一兆一千八百億円減(6・5%減)で、臨時財政対策債も一兆六千七百九十億円減(28・6%減)です。

 今回の削減は、地方単独事業削減など地方財政計画を一兆五千四百億円削減する一方、地方税や譲与税、交付金など一兆七千億円の歳入増を見込んでいるためです。

 同時に、地方交付税の削減をねらう方針の具体化に踏み出したものともいえるもので重大です。

 押しつけ合併をすすめる市町村合併推進事業に今年度と同じ三十二億円を計上。地方自治の形がい化を招く道州制をねらって、北海道モデル事業推進費を創設し百億円を付けました。

微増で最低水準続く

中小企業

 中小企業対策費は千七百三十八億円(経済産業省計上分千三百五億円・財務省分三百九十二億円・厚生労働省分四十一億円)です。

 今年度比九億円(0・5%)増やしたものの、一般歳出に占める比率は0・36%、一般会計総額への比率は0・21%と、昨年と同じ、中小企業基本法制定以来の最低水準です。国内産業空洞化のなかで、包括的・抜本的支援強化が求められる中小企業にはあまりにも少ない額です。

 経営不振に陥り、地域に影響の大きい地方企業の再生を支援するとして、中小企業再生支援協議会事業に二十六・七億円(今年度比八・二億円増)を計上。

 新規性の高い技術資源をもつ中小企業の研究開発や事業化を支援する中小企業・ベンチャー挑戦支援事業(開発百七十件、事業化八十五件めど)に新規に三十三・九億円。地域特性を生かした中小企業製品を国内・海外に広めるために市場調査やデザイン開発を支援するJAPANブランド育成支援事業に、財務省原案から復活して九・三億円(新規)を認めました。

 中心市街地などの中小商業を活性化するために、チャレンジショップなど商店街がとりくむ総合支援に三十七・〇億円(同四・六億円増)をつけています。

「イラク復興」盛り込む

ODA

 ODA(政府開発援助)予算は八千百六十九億円で、今年度比四百九億円、4・8%の減額となりました。五年連続のマイナスです。新ODA大綱決定(八月)後初の予算は「国益を重視」し、「援助対象の戦略化・重点化による徹底した効率化」(財務省)を図ったとしています。

 内訳は無償資金援助に二千百六十一億円(今年度比3・8%減)、二国間技術協力に三千百十八億円(同3・4%減)、国際機関への出資・拠出に千二十三億円(同6・8%減)、円借款に千八百六十六億円(同6・8%)となっています。

 「イラク復興支援」の名目で、緊急無償枠の増額(三百十七億円)などを盛り込んでいます。

「改革」の名で農家切捨て

農林水産

 農林水産関係予算(一般会計分)は、今年度当初予算比1・9%減(五百九十二億円減)の三兆五百二十二億円。その内訳の「公共事業関係費」は、同4・6%減の一兆三千七百十二億円。これは、農林水産関係予算全体の44・9%になっています。

 このほか、「食料安定供給関係費」が同1・8%減の六千七百四十九億円、「一般農政費」が同2・0%増の一兆六十一億円となっています。

 また、来年度は、小泉内閣が強行しようとしている「コメ政策改革」実施の初年度のため、その関係予算も盛り込みました。この「改革」は、コメ輸入と減反強化をそのままにして、財政的な助成を一部の大規模農家に集中し、生産の大半を担う小規模な稲作農家をさらに切り捨てる内容。その関係予算(一般会計分と食糧管理特別会計分の合計)として、「産地づくり対策」費千六百五十一億円などを計上しています。

 また、「農業委員会交付金・協同農業普及事業交付金等」は、同6・9%減(二十八億円減)の三百八十二億円にしています。

新規にゲノム機能解析

科学技術

 文部科学省の科学技術振興費は今年度当初比4・4%増の一兆二千八百四十一億円。経済活性化に直結する研究開発プロジェクト(今年度当初は七十三事業、計七百四十億円)に特に配慮し、全遺伝情報(ゲノム)機能解析などを新たに盛り込み、九十二事業、計千五十億円に拡大しました。

 基礎研究のための科学研究費補助金は3・7%増の千八百三十億円。青森県六ケ所村がフランスのカダラッシュと誘致を競い建設地決定が先送りされた国際熱核融合実験炉(ITER)計画に対応し、誘致成功の場合に必要な二十七億円を計上。新規では、電波望遠鏡で宇宙の誕生過程を解明する国際共同プロジェクト「アルマ計画」参画のための十億円、新たなニュートリノ研究の実験施設の六億円などを盛り込みました。

抗議受け私学助成上乗せ

文教

 文教予算(科学技術振興費はのぞく)は四兆八千四百八十九億円で、今年度比三千九百二十五億円(7・5%)減となりました。

 内示で今年度より大きく削られていた私学助成(私立学校への経常費補助)は、父母や教職員、高校生からの強い抗議を受け、復活折衝で上乗せしました。私立大学は今年度と比べ四十五億増の三千二百六十三億円、私立高校は同二十七億円増の千二十八億円を盛り込みました。

 義務教育費国庫負担金について、補助金カットの対象となった教職員の退職手当と児童手当の合計二千三百九億円は、「交付金」として地方財源になります。また教職員給与の半分を国が負担する制度本体について来年度から「総額裁量制」を導入します。

 「総額裁量制」は、国が支給する負担金の範囲内で各都道府県が、教職員の配置や給与を弾力的に決められるというものです。地方が選択すれば、小人数指導のための加配教職員を小人数学級の編成に活用することができるようになります。

 一方この制度は、増員を理由にした教職員給与の引き下げや非常勤教員の拡大につながり、教職員の身分を不安定にする問題があります。

 奨学事業には千三百四十六億円を計上し、貸与人員は九十六万五千人で今年度より九万九千人(無利子一万千人、有利子八万八千人増)の枠を拡大しました。


「ミサイル防衛」、ヘリ空母導入

軍事費

 軍事費(防衛関係費)は、今年度予算より五百億円減(1・0%減)の四兆九千三十億円(SACO関連経費二百六十六億円を含む)。米国の先制攻撃戦略に深く組み込まれる「ミサイル防衛」導入と、海外派兵へ重点を移す「防衛計画の大綱」見直し作業を先取りした内容になっています。

 イラク派兵のための経費として、百三十五億円を盛り込みました。

 政府が導入を計画する「ミサイル防衛」は、イージス艦に搭載する新型スタンダード・ミサイル(SM3)と、地上配備型の新型パトリオット・ミサイル(PAC3)を組み合わせたシステム。来年度予算には、イージス艦一隻に配備する分で三百四十億円(艦船の改修費を含む)、航空自衛隊の一高射群に配備する分で五百八十二億円を計上。〇七年度末までに配備を終える計画です。

 次世代の「ミサイル防衛」システムの日米共同技術研究費(七十七億円)などを加えると、全体で千六十八億円に達します。

 このほか、長期間にわたる海外活動を想定した“ヘリ空母”(ヘリコプター搭載護衛艦)一隻に千五十七億円。戦闘機の海外遠征能力を飛躍的に高める空中給油機一機(三機目)に二百四十億円を計上。アフガニスタンでの対テロ報復戦争やイラク戦争で、多くの民間人の犠牲者を出した精密誘導爆弾の新規導入費として、十億円を盛り込んでいます。

 在日米軍駐留経費の日本側負担である「思いやり予算」は、総額二千四百四十一億円(十九億円減)。内訳は、労務費千四百三十億円、光熱水料費二百五十八億円、訓練移転費四億円、提供施設整備費七百四十九億円。

 内閣官房予算である情報収集衛星(軍事偵察衛星)経費六百三十二億円(十二億円減)を加えると、軍事費総額は四兆九千六百六十二億円です。

財投計画 地方向け削り20兆円に

 二○○四年度の財政投融資計画の総額は、今年度比12・5%減の二十兆四千八百九十四億円となりました。五年連続の減額で、一九八二、八三年度水準まで縮小しました。

 地方向けは八兆七千億円。このうち一兆七千二百億円は、自治体が減税の財源に発行した減税補てん債の借り換え分。○四年度限りの特殊要因で、これを除けば同24・3%減となるとしています。

 政府系金融機関では、復活折衝の結果、証券化された住宅ローンを住宅金融公庫が引き受ける枠を八万戸(財務省原案六万戸)に増やしました。

 財投機関が市場から直接資金を調達するための財投機関債は二十三機関が発行を計画。総額は四兆四千億円となりました。


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