2003年12月27日(土)「しんぶん赤旗」
外務省は二十六日までに、イラク国内での派兵自衛隊の法的地位について、裁判権免除など占領軍の特権を規定したイラク占領当局(CPA)命令一七号が適用されることを明らかにしました。法的にも全権を掌握する占領軍の一員となることが明確になりました。
イラクへの自衛隊派兵「基本計画」策定(九日)を受け、外務省がCPAと連絡を取り、「命令一七号が適用される」ことが確認されました。
命令一七号は、米英占領軍の責任と権限などを明記した国連安保理決議一四八三を受け、六月二十八日に出されたもの。同命令によると、イラク占領軍の構成員は、刑事・民事・行政のいかなる裁判権からも免除され、逮捕、拘禁もされません。構成員に対する裁判権は母国に属し、イラク市民が物的損害や死亡、傷害などの被害を受けた場合、「加害者の母国に訴えなければならない」と規定しています。
この命令に従えば、イラク市民をテロ勢力と誤認して射殺した場合でも裁判はおろか、一時的な拘束も免れます。
石破茂防衛庁長官は、自衛隊員がイラクで誤って民間人を殺傷しても、「部隊行動基準(ROE=交戦規則)に従って行動した隊員の責任を問うてはならない」(十五日の衆院イラク特別委)として、処罰はしないとの考えを示しています。
政府は、イラク派兵で航空自衛隊の活動拠点となるクウェートとは、自衛隊の地位に関する交換公文を二十三日に交わしています。自衛隊が海外派兵を開始して以来、「最初の地位協定」(外務省)です。
公文によると、自衛隊員が事故や犯罪を犯しても、クウェート政府の刑事裁判権を免除されます。また、民事・行政裁判権についても、公務中であれば免除されることになっています。