2003年12月30日(火)「しんぶん赤旗」
厚生労働省は二〇〇四年度予算案で、生活保護費のうち、七十歳以上の高齢者に支給される老齢加算(月約一万七千円)を三年間で段階的に廃止する方針をうちだしました。厚労省の担当者は「財政的効果を得たい」(二十日の記者会見)と強調。生活保護世帯への「痛み」を単なる予算の問題としかみていません。
三年間で段階的に廃止されるとどうなるのか。
老齢加算額は地域によって違います。一級地−−(東京二十三区)では、これまでの一万七千九百三十円が、二〇〇四年度には九千六百七十円、〇五年度には三千七百七十円になり、〇六年度でゼロになります。削減額は、〇四年度で百六十七億円となります。
この対象となるのは現在の受給者。これから七十歳になるお年寄りについては、「段階的」ではなく、〇四年度から老齢加算分がすべてカットされ、こうした人を含めるとさらに大きな削減額となります。
老齢加算の廃止に加え、生活扶助部分(飲食費や衣類費、光熱費など)が引き下げられます。年金の物価スライドによる支給減と連動させたもので、0・2%削減されます。老齢加算削減分を合わせると厚労省の試算では、〇四年度で、月八千四百十円の減額(一級地−1)になります。
そもそも七十歳以上の高齢者に支給される生活保護費は、老齢加算を含めても、月八万八千円です。不況のなかの生活困難を老齢加算で何とか補っているのが実態です。
政府は、〇四年度の実施は見送ったものの、母子家庭への「母子加算」の廃止や、生活保護への国庫補助そのものの引き下げを計画しています。
生活保護基準は、不十分な面をもちながらも、憲法第二五条に明記された「健康で文化的な最低限度の生活」に必要な生活費の基準となっています。税金の課税最低限を決める大事なものさしになっており、就学援助の適用基準や公営住宅家賃の減免基準のものさしとしても使われています。その引き下げは、生活保護世帯の問題ではなく、国民生活全体の切り下げにつながるものです。