2004年1月4日(日)「しんぶん赤旗」
深刻な小児救急医療にたいし、来年度予算案に、小児科医が夜間の電話相談に応じる新制度が盛り込まれました。来年度予算額は五億円です。
電話相談は、全国どこからでも電話一本で小児科医につながるしくみ。窓口となる電話番号は全国共通で三ケタなどの短縮番号となります。
休日や夜間など診療時間外に子どもの具合が悪くなった場合、保護者がかけると当番の小児科医に転送されます。
医師は病気やけがの状況を聞いて、自宅での対処方法や救急治療が必要かどうかなどを助言します。都道府県が実施主体で、全国共通の電話番号については一月をめどに現在調整中。利用した際は通話料がかかります。
早いところは四月からスタートする予定です。
厚労省担当者は新制度の趣旨について、「核家族が増えるなか、若い母親がだれにも相談できない状況になっている。適切な対処方法を伝えるなどして保護者の安心につなげたい。また、軽症患者が夜間に殺到する事態もおきており、必要のない受診は減らして混雑を防ぎたい」といいます。
来年度予算では、電話相談事業のほか、地域の内科医などを対象に小児救急に関する医師研修の新たな実施が盛り込まれました。
実施主体は市町村で、申請のあったところに補助金を出します。このための来年度予算額は二億円となっています。
小児救急医療をめぐっては、昨年九月に岩手県一関市で生後八カ月(当時)の男の赤ちゃんが、小児科医が不在だったために適切な医療を受けられず亡くなった事件など、体制不備と医師不足が問題になっています。
厚労省によれば、小児科をもつ病院は一九九八年は三千七百二十カ所だったのが、二〇〇二年には約一割減の三千三百五十九カ所になっています。
日本小児科学会などは早くから、小児医療の危機的状況を指摘しています。問題は、子どもの診察・治療には手間と時間がかかるのに、医療保険から医師に支払われる診療報酬で正当に評価されていないことです。このため病院の経営上、収益性が低い不採算医療に追い込められ、経済的理由から小児科が減っている実態の改善を強く要望しています。
政府は、こうした問題を解決する抜本的対策が引き続き求められることになります。
日本共産党の山口富男衆院議員は国会質問(〇二年十二月十一日、厚生労働委員会)で、小児科医不足の背景に国の低医療政策があるとし、政府の責任を追及しました。
中林よし子前衆院議員も(〇三年五月十九日、決算行政監視委員会)、一番の問題は小児医療の不採算性だとして診療報酬の抜本引き上げを要求。これにたいして坂口力厚労相は、診療報酬引き上げについて「十分考慮したい」と答え、「全体として小児医療の前進のために努力したい」とのべました。今回の診療報酬改定にどう実現するかが当面の焦点となります。(江刺尚子記者)