2004年1月9日(金)「しんぶん赤旗」
東京地裁で審理中の学生無年金障害者に年金支給を求める訴訟(原告・身体障害者四人)が二十八日に結審します。国民年金加入が任意とされた当時のけがや病気が原因で障害になっても障害基礎年金が支給されない学生無年金障害者三十人が全国九地裁で国を相手取り、「国民皆年金の法理に反する」と争っています。この中で東京地裁の進行がもっとも早く、四月にも判決が出るとみられています。(鈴木進一記者)
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東京地裁の原告の一人、東京・青梅市ではり指圧治療院を営む福島敏彦さん(39)は、大学三年の一九八五年十月、交通事故で両眼を失明、一級障害となりました。
当時、学生は二十歳になっても国民年金については任意加入とされてきました。
福島さんが事故に遭ったのは、二十歳十カ月のとき。国民年金に加入していなかったために、障害基礎年金を受給できません。もし、二十歳になる前だったなら、「二十歳前障害基礎年金」が支給されたことになります。
裁判のなかで福島さんは、加入が義務付けられず、ほとんどの学生が加入しなかった時期に事故に遭ったからといって、なぜ障害年金が支給されないのか、この年金はだれのためにあるのか、と訴えました。福島さんは、妻の美江子さん(42)と二人の子の四人家族。長引く不況の中で生活が苦しく、開院していない昼休みに訪問治療するなど休みなく働いています。
毎回裁判を傍聴している美江子さんは強調します。「他の原告の方も、重い障害で苦しみながら、お父さんなど肉親に支えられています。肉親の方も高齢になっており一刻も早く解決してほしい」
原告の他、年金・社会保障問題の専門家も原告側証人として証言、無年金障害者を生み出している制度の欠陥を指摘しました。
昨年七月九日、佐藤進氏(新潟青陵大学教授、日本女子大名誉教授)が証言しました。同氏は、現在の年金制度(一九八五年成立、八六年四月施行の改正法)について審議した当時の国民年金審議会の委員です。
佐藤氏は、国民年金審議会や社会保障制度審議会が相次いで答申の中で、学生無年金障害者を生み出す「重大問題」に留意するよう指摘。また、国会審議でもとりあげられたにもかかわらず、学生無年金障害者を生み出す仕組みのままに八六年四月改正法がスタートしたことを明らかにし、「保険料の拠出のいかんにかかわらず救済することこそが本当の福祉国家である」と強調しました。
同十月一日には、法政大学名誉教授の高藤昭氏が原告側証人として証言しました。高藤氏は、学生無年金障害者を生み出したのは、学生などを任意加入とし、加入しない学生を法の対象から外すという憲法違反の制度によるとのべ、加入していなかったという理由で障害を負っても障害基礎年金を支給しないのは、国民皆年金の法理に反していると指摘しました。
学生無年金障害者
学生は二十歳以上でも国民年金には任意加入とされ、加入していない間に、けがや重い病気で障害を負っても、障害基礎年金が支給されませんでした。学生無年金障害者の運動と世論の高まりの中で、一九九一年四月から学生も強制加入になり、二〇〇〇年四月から、「保険料支払いは、社会に出てから」という「学生納付特例制度」が導入されました。政府は、このような手直しを重ねながら、学生無年金障害者の年金支給を求める声を抑えつづけています。
国会付帯決議も無視 無年金障害者救済については、九四年に国会付帯決議で「無年金である障害者の所得保障については、福祉的措置による対応を含めて検討すること」とうたっていますが、これも具体化されていません。