日本共産党

2004年1月9日(金)「しんぶん赤旗」

イランとエジプト 国交回復へ

背景にはイラク侵略での米国への怒りと不信が


 イランのアブタヒ副大統領は六日、同国とエジプトが二十五年ぶりに国交を回復することに合意したとロイター通信に語りました。イランは、米国から「悪の枢軸」の一つとして敵視されています。エジプトは、親米国ながら、イラク戦争で米国と距離を置く姿勢をとってきました。その関係修復は、米主導のイラク占領が行き詰まるなかでの新たな動きです。

 アブタヒ副大統領は「両国は関係回復を決定し、現在その準備中だ」とのべるとともに、「両国は協力し合うことで世界の諸問題に影響を及ぼす強国になることができる」と強調しました。

 エジプトのマーヘル外相は同日、「決定」を語るには早すぎるとしながらも、「決定がなされれば、正式に発表される」とのべ、関係修復の動きを否定していません。

 両国の関係断絶は、一九七九年のイラン・イスラム革命直後のこと。エジプトのサダト大統領(当時)が、米国主導の中東和平の枠組みを目指した七八年のキャンプデービッド合意に調印してイスラエルと国交を結び、さらにイラン革命で追われたパーレビ国王をかくまったため、イランが国交を断絶しました。

 エジプトのフセイン・アミン元大使は、関係修復の背景に米国のイラク侵攻で両国がその威信を問われているとの感情があるとみています。元大使は、「イランはわれわれアラブ世界以上に(イラク侵攻によって)屈辱を受け、脅威を感じている」と指摘しています。

 米国から敵視されているイランは、国際社会での孤立からの脱却の動きを強めてきました。核兵器開発疑惑の解消のため、昨年十月には英仏独三カ国外相と会談し、十二月十八日に核開発疑惑施設への抜き打ち査察を可能にする国際原子力機関(IAEA)追加議定書に調印。ハタミ大統領は十二月十日、ムバラク・エジプト大統領と、両国首脳としては二十数年ぶりにジュネーブで会談しました。

 一方、エジプトの変化の背景には、イスラエルのシャロン政権の下でのパレスチナ人抑圧の強化と米国のイラク侵攻がある、とカイロの外交筋はロイター通信に語っています。同筋は「(パレスチナ人の)インティファーダ(民衆蜂起)が両国の立場のギャップを埋めた」「エジプトは今、ワシントンとの間で、媚(こ)びを売っても仕方がないほどの緊張関係にあると感じている」とのべています。国民の大多数がシーア派であるイランが、人口の六割を同派が占めるイラクに影響力をもつことも、エジプトは考慮しているといわれます。

 ロイター電によると、米政府当局者は両国の関係修復の動きに「注意深い歓迎」を表明しました。米国の反応は、エジプトがイランに影響力を及ぼすというものと、「エジプトはもはやわれわれの側にいない」という見方の入り混じったものだといわれています。

(伴安弘記者)


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