2004年1月10日(土)「しんぶん赤旗」
米国の有力シンクタンク(研究機関)「カーネギー国際平和財団」は八日に発表した報告書「イラクの大量破壊兵器 証拠と影響」の中で、米国がイラク戦争の最大の口実にした大量破壊兵器の脅威に根拠がなく、誇張されたことを指摘すると同時に、「差し迫った脅威」がないのに先制攻撃を行う戦略を放棄すべきであるとブッシュ政権に提言しました。
ブッシュ政権が一昨年の「国家安全保障戦略」で体系化した先制攻撃戦略は、国連憲章に基づく国際平和秩序を破壊するものとして批判と懸念を広げてきました。国内の有力研究機関がその放棄を求めたことは、同戦略の破たんをより鮮明に示すものといえます。
報告書は、米政権自身もイラク戦争を開始する前の段階で「差し迫った脅威」という語句を用いなかったことや、米英両国とイスラエルの各情報機関も脅威の度合いに関しては全く違った評価を下していたことも明らかにしました。その上で「差し迫った脅威がないもとでの一方的な先制戦争ドクトリンを削除するよう国家安全保障戦略を改定する」ことを求めました。
一方で、報告書は“真の脅威がある場合”の先制攻撃を容認。「真の先制攻撃は必要な時には活用される合法的な戦術である」としています。しかし、イラク戦争にかんしては、「一方的に断定され実行される予防戦争ドクトリンは米国の国家安全保障の利益に役立たない」と結論付けました。
またイラクがテロ組織に大量破壊兵器を提供したとするブッシュ政権の主張も、証拠に欠けると指摘。この観点から報告書は、「“邪悪国家”や“ならず者国家”が大量破壊兵器をテロリストに譲りそうだとする疑問の余地のある想定」は「緊急に徹底分析する必要がある」と述べています。