日本共産党

2004年1月10日(土)「しんぶん赤旗」

弁護士費用の「敗訴者負担」とは?


 〈問い〉 弁護士費用の現在の費用負担はどうなっていますか。「敗訴者負担」が導入されるとどんな問題が出るのでしょうか。(福島・一読者)

 〈答え〉 いま弁護士費用は当事者が各自で負担するのが原則です。裁判では当事者は弁護士にまず着手金を支払い、勝訴となったときや和解で終わったときなどにはその成功に応じた報酬金を支払います。ただし損害賠償請求の裁判では、原告が被告側に弁護士費用も請求した場合、裁判所が被告に負担を命ずることもあります。

 裁判では、裁判所に印紙で納める手数料などの費用も必要です。これらの費用負担から裁判を断念する人が出ないよう、裁判費用を支援する法律扶助制度を欧米なみに充実させることなどが求められています。

 いま政府の司法制度改革推進本部・司法アクセス検討会が議論している「弁護士費用の敗訴者負担制度」は、裁判で負けた側が相手の弁護士費用も負担すると、事前に決めるものです。「相手方が費用を負担するなら裁判を起こしやすくなる」というのが推進派委員の主張です。しかし労働裁判や公害裁判、消費者裁判などで、大企業は巨額の訴訟費用を投入しています。敗訴すればこの費用まで負わされるのでは、国民が大企業を訴えることは極めて困難になります。そのため反対意見が殺到し、検討会も大筋で「行政、労働、消費者訴訟、人身損害の損害賠償請求訴訟などには導入しない」と一致しました。

 ところがその後、双方が合意すれば導入できるという「合意による敗訴者負担」の議論が急浮上し、事前の契約ではなく、裁判提訴後に双方が共同で申し立てた場合のみ適用するとの検討会の結論となりました。しかしこれは、合意を拒否すれば裁判官に“自信がない”との否定的心証を持たれかねないなどの心配もあります。制度の出発点は「提訴後の合意」だとしても将来これを突破口に「敗訴者負担条項」を盛った労働契約や消費者契約にまで広げられることも懸念されています。 

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 〔2004・1・10(土)〕


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