2004年1月12日(月)「しんぶん赤旗」
自民党の中川秀直国会対策委員長は四日、改憲のための手続きを定める国民投票法案を議員立法として、十九日からの通常国会に提出する考えを表明しました。「憲法改正」国民投票法案とは一体何か―。今それを出す狙いについて見ます。
憲法九六条は「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする」と定めています。
つまり、憲法の改正には(1)特別の多数決による国会の発議(国民に向けての改憲案の提案)が行われ(2)改憲案について国民投票を行い、過半数の賛成を得ること―が手続きとして必要です。
この国民投票制度を整備するのが今度の法案であり、明文改憲に直結する動きです。国会による発議のための国会法の「改正」も同時に計画されています。
どうして自民党はいま国民投票法案を急いで国会に提出するというのでしょうか。
自民党は「〇五年に改憲草案をまとめる」とし、公聴会開催など「国民運動」を展開するとしています。民主党も「憲法の還暦(〇六年)までに改憲案を取りまとめる」とするなど、改憲=九条改悪へ向けた各党の動きは急です。
こうしたなか、国民投票法案を国会に提出し、改憲日程を具体的にすることで、国民の間での改憲機運を盛り上げたい、という狙いもあります。
改憲の狙いは九条を改悪して、米国の要求に従い自衛隊を海外へ自由に派兵し武力行使できるようにすることにあります。
改憲勢力は、この狙いを正面から押し出すことを避け、「(改憲するという)精神が新しい時代を切り開いていく」(自民党・安倍晋三幹事長)などと、あたかも国民主権の実現であるかのようにのべています。改憲手続きについても、「憲法のうえで存在が予定されている国民投票制度が整備されないで来たことは立法の不作為だ」と正当化しようとしています。しかし憲法制定以来半世紀以上も「不作為」をそのままにしながら、いまになって「不作為」をことさら強調する意図は明白です。
「立法の不作為」などというのは、米国に付き従う海外派兵国家づくりのための九条改憲という本当の狙いをごまかす議論にすぎません。
法案は自民、民主、公明などの改憲派議員でつくる憲法調査推進議員連盟で作成済み(二〇〇一年十一月=別項)であり、自民党はすでに了承済みです。公明党、民主党は十分な党内論議ができていないとしています。
自民党単独での“見切り発車”に議連関係者は「自民党単独での法案提出はのぞましくない」と困惑の表情も見せています。民主党の菅直人代表は六日、法案提出に対して「民主党を揺さぶろうと自民党が考えているならあまりに姑息(こそく)だ」とのべました。
法案自体にも、投票権者を二十歳以上に限定していること、複数の改正点が示された場合、一括して賛成・反対をするのか、個別の論点ごとに賛成・反対を示すのかあいまいにされたままなど、さまざまな問題点が指摘されています。
「憲法改正」国民投票法案は、改憲策動の一環であり、その強行を許さないたたかいが求められています。
憲法調査推進議員連盟作成の国民投票法案 (1)国会の発議から六十日以降九十日以内に国民投票を行う(三一条)(2)投票権者は年齢満二十年以上の者とする(七条)(3)憲法改正に賛成のときは投票用紙の記載欄に〇、反対のときは×を記入する(三七条)(4)賛成票が有効投票の二分の一を超えるときは改正についての国民の承認があるものとする(五四条)(5)国民投票運動に関する罰則を伴うさまざまな規制を設ける(一三、一四章)―などから成ります。