2004年1月12日(月)「しんぶん赤旗」
A級戦犯が合祀(ごうし)されている靖国神社を小泉首相が元日に参拝したことにたいし、中国メディアは批判的な論評や記事を次々発表。小泉内閣がすすめる自衛隊のイラク派兵との関連で強い警戒感を示しています。
中国国営の新華社が運営する新華ネットは七日、香港の亜州時報オンラインが「小泉首相の危険なゲーム」と論評しているのを紹介しています。
論評は、地域情勢に緊張をもたらすことをよく知っていながら、小泉首相が「悪名高い」靖国神社を参拝するのは、“日本がどのように歴史を解釈しようと日本自身のことで他国とは関係ない”と考えているからだとし、このようなやりかたはアジアの国の人々が受けた苦しみをまったく無視するものだと批判しています。
論評はまた、小泉首相が狙っているイラクへの自衛隊派兵は「戦後日本の転換点になる」と指摘。憲法九条改定の動きとあわせてみると、「小泉首相は第二次世界大戦失敗後に日本に対して設けられたさまざまな制約から抜け出そうとしている」として、靖国参拝もその戦略の一部分だと分析しています。
日本がこの目標を本当に達成したなら、日本と隣国、特に中国との関係は非常に緊張したものに変わるだろうと指摘し、「小泉は危険なゲームをしている。もしこのゲームに勝ったとしたら、長期的には日本に非常に不利となるだろう。隣国を無視した狭い民族主義が災難をもたらすことは、歴史がはっきりと証明している」と警告しています。
広州を中心に発行する南方都市報(電子版)三日付は、小泉首相が「各国にはそれぞれの歴史や習慣がある」と述べて靖国参拝を合理化しようとしたことに強い怒りをこめた論評を掲載しました。
論評は、「なぜ日本は、中国や韓国など軍国主義の蹂躙(じゅうりん)を受けた国とその民衆の歴史観を理解し尊重することができないのか」と批判。周辺国との友好関係を破壊してでも参拝を続けるのは、小泉首相が政治の「総保守化」と「普通の国家になる」ことを目指す過程で、参拝の合法化と慣例化を実現し、戦後の意識形態を変えて「軍事大国化」を進めるためではないかと懸念を表明しています。
人民日報が主管する環球時報(電子版)二日付も、小泉首相が靖国参拝を日本人の民族的習慣だと強調したことについて、「少しでも歴史の常識があり、靖国神社について理解がある者は、そのような釈明がへ理屈であり、ごまかしにすぎないことがわかるだろう」と批判。日本が重装備の部隊を海外に派兵し、ミサイル防衛システムを導入するなどしている微妙な時期に、小泉首相が参拝に固執しているのは「アジア人民の感情をまたもや逆なでするものだ」と述べています。
新華ネットは二日付で、中国国内の世論が小泉首相の靖国参拝を強く批判し、参拝の当日に三百以上の書き込みや意見が寄せられたとして、多くの学者や市民の主張を紹介しました。
南京師範大学の大学院生・王艶さんやクラスメートは小泉首相の行動に強い驚きを感じたと言い、「新年早々、小泉首相は中日関係の発展に大きな影を落とした。小泉首相の再三の靖国参拝は、日本国内の右翼勢力が絶え間なく台頭してきていることを示している。アジアの平和への脅威であり、不安を感じる」と述べました。
中国社会科学院日本研究所の馮昭奎研究員は、「日本が第二次大戦後最大規模の海外派兵計画を実施しようとしていることと靖国参拝、この二つは日本国内で大きな議論を巻き起こしており、ある種の危険な動向を示している。アジア各国は強い警戒心を抱かざるを得ない」と述べています。
北京で働く銭さんは、昨年中国は多くの国と相互信頼関係を強めることができたが、中日関係は冷めたままだったと憂慮を表明。問題は日本が歴史問題でまじめに反省しなかったことにあり、今回の参拝はこのような不信感をさらに深めてしまったと指摘。「日本の指導者はアジア諸国の日本に対する信頼感を醸成すべきであって、損なうべきではない。靖国問題で間違ったやり方を続けるなら、中国、アジア、世界の人々の信頼を失い、最終的には日本自身の利益を損なうだろう」と強調しました。(雨河未来記者)