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2020年5月15日(金)

検察庁法改定案

検察まで私物化するのか

内容も進め方も大問題

 政府が検察人事に介入する仕組みを制度化する検察庁法改定案。短文投稿サイト・ツイッターで著名人が次々に声をあげ、「#検察庁法改正案に抗議します」のツイートが1000万をこえて広がるなど大きな批判を受ける法案の問題点と、政府・与党の乱暴な拙速審議を見てみます。


審議のやり方

拙速、強行許されない

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(写真)「審議不能」として野党が退席した衆院内閣委員会=13日

 検察私物化の検察庁法改定案は審議のやり方も、極めて乱暴なものです。

 同法案の担当大臣は本来、森雅子法相です。ところが、法案は国家公務員法改定案の中に束ねられ一括審議とされ、内閣委員会に提出されています。野党は法務委員会と内閣委員会の連合審査を求めましたが、与党が拒否。そのため、森法相に質問できないという異常な審議になっていました。

 答弁に立っている武田良太国家公務員制度担当相は13日の内閣委員会で、昨年10月の段階では検察官の勤務延長の規定がなかったのに、1月以降に法案に入ってきた経緯などを聞かれると、「法務省の職員ではありませんので、口をはさむ立場にない」と答弁。法務省内での同法案の検討内容についても「法務省の職員ではないので、具体的には言えない」などと無責任答弁を繰り返しました。政府・与党の国会愚弄(ぐろう)の姿勢は目に余ります。

 また、定年延長の判断について、野党が恣意(しい)的運用にならないための基準はあるのかとただすと、武田氏は「法務省において検討を進める」「今はありません」と放言し、審議はストップしました。法案の最大のポイントについて政府が全く説明しないままで審議と採決を強行することなど許されません。

 同改定案は、黒川弘務東京高検検事長の定年延長の「閣議決定」(1月31日)を後追いしたものです。

 政府が提出した「案文修正の経緯及び概要」には、「国家公務員法の勤務延長制度が検察官についても適用されるものと整理されたことから新たな修正を行うこととなった」と述べています。国家公務員法を適用し、黒川氏の定年延長を決めたことから「法案を変えた」ということです。

 しかし、国家公務員法の定年延長の規定は検察官に「適用されない」と解釈されてきたのであり、「適用される」との解釈と両立しません。そんな解釈変更が成り立つはずがありません。強引に決定した黒川氏の勤務延長を後付けるために、違法な「解釈変更」を強行したのです。

 その違法な解釈を追認しようというのが今回の法案です。まともな民主政治、立憲政治とはかけ離れた状況です。

立法趣旨に違反

破壊される三権分立

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(写真)「検察庁法改定案を許すな」と訴える人たち=12日、東京・新宿駅西口

 検察庁法改定案は一般の検察官の定年を63歳から一律65歳に引き上げ、同時に63歳からは幹部には就けない「役職定年」を設けるというものです。

 問題となるのは、定年を迎えても勤務の延長が可能となる「特例」が設けられたことです。特例は、「内閣が定める事由があると認められるとき」には1年を超えない範囲で次長検事や検事長のポストにとどまることができ、さらに「内閣の定めるところ」により1年を超えない範囲で期限を延長(最長3年)できるというもの。この規定により検事総長は最長68歳まで延長が可能になります。

 この特例で、幹部検察官の勤務延長の是非を政府が決められるようになります。

 また、同法案は役職定年を延長する要件が不明確です。「公務の運営に著しく支障を生じると認められる事由」と漠然としており、恣意(しい)的な運用の危険性が極めて高くなっています。

 検察の生殺与奪の権を政府が握ることになれば、政治的中立性・独立性は脅かされ、三権分立は破壊されます。

 検察官は、時の総理大臣も逮捕・起訴できる権限を持ち、政治権力の不正を法的に追及できる唯一の機関です。安倍政権ではこの間、公職選挙法違反疑惑やカジノ汚職が発生し、「桜を見る会」をめぐっては安倍首相自身が刑事告訴されるなど、検察の捜査対象となる問題が次々に噴出しています。そうした中で、内閣が恣意的に検察人事に介入できるようになれば、政権の疑惑にメスを入れる捜査の公正性が損なわれかねません。

 改定案は検察庁法の立法趣旨にも反しています。検察庁法に「定年延長」の規定がないのは、「延長」という形で内閣が検察に政治的影響を及ぼすことを排しているからです。これは、明治憲法下で、特高警察による弾圧・拷問など人権侵害が相次いだ歴史をふまえ、刑事手続きにおける人権を徹底的に保障した日本国憲法の要請を具体化したものです。今回の改定案は検察庁法の立法趣旨をゆがめています。検察権力と行政権力が一体化した場合、不当な国策捜査につながる危険性があります。


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