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2020年6月22日(月)

全国都道府県委員長会議

志位委員長の発言

 日本共産党の志位和夫委員長が20日の全国都道府県委員長会議でおこなった発言は次のとおりです。


写真

(写真)発言する志位和夫委員長=20日、党本部

 まず私は、新型コロナ危機のもとでの都道府県委員長のみなさんの大奮闘に心から敬意を申し上げたいと思います。5月には、すべての都道府県で、「しんぶん赤旗」が日刊紙でも日曜版でも前進を勝ち取りました。沖縄県議選では、日本共産党は、7人全員の勝利という快挙を達成しました。どちらもわが党ならではの画期的な成果だと思います。危機のなかでのみなさんの奮闘に、私も心からの敬意と感謝を申し上げ、たたえあいたいと思います。(拍手)

コロナ危機のもと、国民の意識に前向きの大きな変化が起こっている

 今日の会議の問題提起の中心点は、小池(晃「特別月間」推進)本部長がのべたように、いかにして「特別月間」の中心課題である党員拡大で、初動の前進の流れをおこしていくかにあります。とくに、「党員拡大はどの支部、どの党員でもできる取り組み」だということ、「対象者をうんと広げる」ということ――この二つをしっかり握って、足取り軽く、どんどん働きかけていくようにする。これが今の指導上の「環」であります。

 私は、現在の情勢の特徴をどうつかむかとのかかわりで、この問題について若干の点をのべたいと思います。

 この間、新型コロナ危機を、文字通りすべての人々が体験しました。また、その体験は、終わったわけではなく、現在進行形です。その体験を通じて、私は、国民の意識に前向きの大きな変化が生まれていると思います。しかも、一過性ではない、深いうねりのような変化が、いま起こっていると感じます。そこをよく捉えて活動することが大事だと考えます。3点ほどのべたいと思います。

かつてない多くの人々が「こんな政治でいいのか」と感じ、声を上げている

 第一は、これまで政治に関心がなかった人も含めて、かつてない多くの人々が、「こんな政治でいいのか」と問いかけ、声を上げているということです。午前中の発言でも、そうした変化がこもごも語られました。

 新型コロナ危機のもとで、政治というものは、遠いものでも、関係がないものでもなく、実は命と暮らしと深く結びついている。このことが痛切な体験を通じて明らかになっています。これまで政治に無関心だった人も、無関係と言っていられない。そういうことがあらゆる分野で生まれていると思います。

 たとえば「PCR検査を受けられない」――不安と怒りの声が列島にうず巻きました。普段はあまりその存在を意識しなかった保健所の体制が、実は脆弱(ぜいじゃく)だということが明るみに出ました。公衆衛生の体制がこんなに日本は後退しているのか。このことが誰の目にも明らかになりました。

 4~5月には医療崩壊の瀬戸際まで来ました。政府は、「日本の医療は世界で最も優れている」というようなことを言ってきたけれど、こんなに脆弱だったのかと多くの人々が知りました。医療機関の経営も、普段から多くが収支ぎりぎりの経営になっており、そこにコロナが直撃してたいへんな経営危機に陥っている。ICU(集中治療室)の数もぞっとするほど少ない。こんなに医療が脆弱だったのか。このことをみんなが知ったと思います。

 「自粛と一体に補償」をというのは、圧倒的多数の国民の強い願いであります。ところが政府は、この当たり前の要求にこたえようとしない。やっと対策を決めてもあまりに規模が小さい。何よりも支援が届くスピードが何から何まで遅い。こういう姿を見て、肝心な時に国が仕事をしないじゃないか、肝心な時には国民に「自己責任」を押し付けるだけかと、この政治のだらしない姿がはっきりと見えたと思います。

 文化・芸術も、イベントの自粛要請が2月の段階から始まり、たいへんな損害を被りました。ところがまともな支援がやられない。そうした体験を通じて、日本の文化予算が、諸外国と比べてはるかに少ないという貧困にも目が向けられました。それから、ドイツの文化大臣は、「文化芸術はぜいたく品じゃない。人間にとって必要不可欠なものだ。だから無制限に支援する」との文化芸術に対する「思想」を語りました。ところが安倍首相にはそんな思想は全くない。文化に対する「思想の貧困」という問題も明るみに出されました。そういうなかでホリプロ社長の堀義貴さんが「しんぶん赤旗」に登場して訴える、多くのアーティストの方々が声を上げるということが起こっています。

 子どもたちの学校の問題では、道理なき全国一斉休校要請から始まって、3カ月もの休校を強いられ、ようやく学校再開になっていますけれども、40人学級の矛盾が噴き出しています。子どもの学びのためにも、心のケアのためにも、感染症対策を考えても、どうしても教員を大幅に増やし、学校を支えるスタッフを大幅に増やすことが急務となっています。

 医療にしても、教育にしても、本来、ゆとりがなければならない。ところが、そのお金を抑え、削ってきた。ゆとりをなくしてしまった。そのツケが、危機のもとで噴き出しているのです。

 このように、新型コロナ危機を体験して、これまでになく多くの人々が政治に目を向け、声を上げ始めている。これまで無関心だった方も含めて、もう関係はないとは言っていられない状況になっている。今回ばかりは、この問題に関係ないと言っていられる人はいないのです。そういうなかで大きな変化が起こっているのではないでしょうか。

 そのときに、日本共産党が立党の精神を発揮して、国民の苦難軽減のために国会でも全国のどこでも頑張っている。この姿に出会って、信頼を深め、共感を広げている。こういう流れが起こっているのではないでしょうか。それがこの間のわが党の前進にもつながったと思いますし、今度の「特別月間」を成功させる大きな条件を示していると思います。

「安倍政権の正体見たり」――二重の深い怒りが渦巻いている

 第二に、新型コロナ危機のもとで、安倍政権の民意無視、国政私物化の政治への深い怒りが渦巻いています。

 検察庁法改定に反対する数百万のツイッターデモは、感染拡大の危機が一つのピークだった時期に起こりました。私たちも驚くような広がりかたをして、ついに法案の廃案という快挙をみんなの力で達成しました。これも国民の画期的な勝利であります。

 なぜこれだけの動きが広がったかを考えますと、この問題そのものに対する怒り――準司法官としての検察の私物化に対する怒りとともに、「コロナ対策をまともにやらないで国政私物化とは何ごとか」と、こういう二重の怒りがあったと思います。つまり「火事場泥棒」にたいする怒りです。「泥棒」をしただけでも怒りますけれど、「火事場」でやっているところに怒りが倍増した。しかも「火事」を消す仕事のほうはちゃんとやらないで、「泥棒」だけやっているというところに、強い怒りが広がったのではないでしょうか。

 沖縄県議選の勝利もまた同じ流れが起こったのだと思います。「コロナ危機のさなかに辺野古新基地建設をやるとはいったい何ごとか」と、ここで怒りがまさに二重になり、「火事場泥棒」にたいする怒りが、広がったのではないかと思います。さきほど、沖縄の同志も発言したように、「辺野古よりコロナ対策を」という訴えが共感を広げ、日本共産党の見事な前進、「オール沖縄」の過半数の勝利につながったと思います。

 こうして、コロナ危機のもとで「安倍政権の正体見たり」、という流れが深く広がったと思います。それが内閣支持率の危機的な下落につながっている。たいへん深刻な不信であります。そこに河井前法相夫妻の巨額の買収疑惑、自民党本部からの1億5000万円という異常に巨額の政治資金疑惑、さらに河井夫妻の逮捕が起こり、これに対する怒りも噴き出しています。

 こうして安倍政権の民意無視、国政私物化のさまざまな問題点に対する怒りが、新型コロナ危機に対するこの政権の対応の問題点と結びついて、国民世論の深いところに広がり、安倍政権が追い詰められ、いよいよ末期的なところまできた。これもたいへんに大事な変化だと思います。

 こうした変化のなかで、この政権と正面から立ち向かう日本共産党の値打ち、また野党共闘の値打ち、それに対する期待の広がりが起こっているのではないでしょうか。

 いま私たちは、いよいよ安倍政権打倒という旗をしっかり掲げてたたかう必要があるということを訴えたいと思います。

パンデミックのもと、「こんな社会でいいのか」という問いかけが

 第三に、さらに視野を広げて考えますと、新型コロナ・パンデミック(世界的大流行)のもとで、広く社会のあり方そのものに目が向けられ、「こんな社会でいいのか」という問いかけが、いろいろな形で起こっています。

 とくに、「新自由主義」――市場原理主義、社会保障切り捨て、自己責任の押し付けの路線を続けていいのかという問いかけは、非常に広く起こっています。この路線を続けてきた結果が、医療も、雇用も、教育も、社会全体をもろく弱いものにしてしまった。これを変えなければいけない。世界でも、日本でも、これまでにない幅広いところから、こうした動きが起こっています。

 私は、野党間でも、こうした方向が共有され始めていることが大事だと思っています。先日、私は、ネットの対談番組で、立憲民主党の枝野代表と対談する機会がありました。その中で、「ポストコロナ」の社会像が問題になりました。そこで私は、「新自由主義は破綻した」という話をしました。枝野代表は、医療の切り捨ての動きについて、「共産党は一貫して反対してきた。立憲民主党は最近になって反対をしている」とのべながら、「新自由主義」ではダメだと、はっきり「新自由主義」への批判をのべたのが印象的でした。

 昨日(19日)の都知事選挙支援の街頭演説でも、私が、小池都政とのかかわりで、「『新自由主義』の居場所は、もはや世界にも、日本にも、この東京にもどこにもない」と、「新自由主義」からの転換を訴えましたところ、枝野代表もその主題で訴え、宇都宮けんじ候補もこの問題にふれて訴えをしました。

 私は、「新自由主義反対」という点で、野党間で、あるいは市民の運動との間でも、太い一致点が得られつつあるのは、今後の共闘にとっても、未来につながる大事な前進だと考えております。

 「自己責任の押し付けでなく連帯の力でより良い未来をつくろう」――この訴えが響く条件がどこにでも生まれているのではないかと思います。

 さらに、「資本主義の限界」ということが、さまざまな形で言われるようになっています。今日(20日)の「しんぶん赤旗」の1面トップで、京都大学総長の山極寿一さんのインタビューがでています。この方はゴリラなど霊長類の研究でたいへん著名な方で、日本学術会議会長を務められている方ですけれども、その方が、この間の感染症の多発というのは、人類が自然を壊してきた結果だと指摘し、「資本主義が利潤をあくまで追求し、そのための自然破壊をためらわない」とのべ、「コロナ禍のもとで、誰もが資本主義は限界だと感じているのではないでしょうか」とズバリと指摘していることを、たいへん印象深く読みました。

 こうして新型コロナ・パンデミックは、社会のあり方の全体を、深いところから問うものになっています。そういう中で改定綱領、綱領路線の生命力が、危機のもとで際立っていると、私は思います。

大きな変化の真っただ中にある国民に、広く働きかけよう

 三つの角度からお話ししましたが、私は今、危機を経験して国民の中に深い前向きの変化が起こっていると思うのです。

 国民のなかでこれだけ大きな前向きの変化、深い変化が起こっているときに、私たちの側が、一人ひとりの人を固定的に見ていたら、大きく立ち遅れることになります。「あの人はこうだ」と固定的に見ないで、多くの人々が大きな前向きの変化の真っただ中にある、そういう姿をリアルにとらえて、党員拡大でも、対象者を本当に広くみて、そして気軽にみんなが足を踏み出していくことが大事ではないでしょうか。

 党員拡大で、対象者を思いきって広くみて広く働きかけようという、今日の会議の冒頭での問題提起の意味を、今の情勢との関わりでもしっかりつかんで、足取り軽く、まさに意気軒高に踏み出していくことが大事ではないかと思います。

パンデミックは歴史を変える契機になりうる

 最後に、人類史をひもといてみますと、パンデミック――感染症の世界的大流行は、社会の矛盾を顕在化・激化させ、歴史を変える契機になりうるということが言えると思います。

 14世紀にユーラシア大陸を横断し、ヨーロッパをなめつくしたペスト、ヨーロッパの人口の4分の1から3分の1の犠牲を出したといわれるペストは、世界史に大きな影響をあたえました。

 おびただしい犠牲が出たわけですが、結果として、中世の農奴制の没落につながりました。つまり農奴の多くが亡くなった。その結果、農村労働者の賃金が高騰するなど、逆にその地位があがることになりました。農奴制は没落し、教会支配も没落し、中世は終わりを告げ、資本主義の扉を開くことにつながったと言われます。

 マルクスの『資本論』を読みますと、第8章の「労働日」にペストの問題が出てまいります。14世紀のイギリスでエドワード3世の時期に、最初の「労働者規制法」(1349年)がつくられたという記述があります(新版(2)475ページ)。この「規制法」は、農村労働者の賃金が高騰したもとで、賃金を抑えるための「規制法」なのですが、ともかくも最初の労働者立法はここから始まり、その後は、労働者のたたかいで労働日を制限する内容に変わっていくのですが、「労働日」の章のなかでマルクスが「労働者規制法」に言及していることは、たいへん印象的です。人類史にそういう変化をもたらしたのです。

 今、世界を見ると、アメリカで警官による黒人の殺害事件が起こりました。この暴挙に対して、全米で激しい抗議運動が起こり、それは欧州に広がり、世界にも広がり、日本にも広がっています。今起こっている怒りは、殺害事件に対する怒りにとどまらず、人種差別主義そのものへの怒りとして広がっている。さらに言えば、植民地主義と奴隷制の歴史に対する怒りとして広がっている。多くの人々を植民地支配の下に置き、大西洋横断の奴隷貿易によって多くの黒人をアフリカから連れてきて奴隷にした。このことに対するまさに歴史的な見直しを迫る流れになっています。新型コロナ・パンデミックによって、貧しい人、黒人やヒスパニックなどに多くの犠牲が集中するもとで、それへの怒りとあいまって、数百年に及ぶ歴史を見直す動きに発展しているのです。

 イギリスでは、奴隷商人の銅像が引き倒され、海に投げ落とされました。ベルギーでは、過酷な植民地支配を行った元国王の銅像が引き倒されました。オーストラリアでは、先住民を無視して植民地化を宣言したキャプテン・クックの銅像が問題になっている。アメリカでは、各地でコロンブスの銅像が壊されている。世界史の見直しが進んでいるのです。

 こうして、パンデミックというのは、人々に大きな犠牲を強いる悲劇ですけれども、歴史を変える契機にもなりうるのです。

日本でも世界でも大きな転機――「特別月間」の成功を

 ただ、これは自動的にはすすみません。もとよりウイルスに社会変革をやる力があるわけではないですから(笑い)。歴史は、人民のたたかいによってはじめてすすむのですけれども、パンデミックは、歴史を変える契機になりうるのです。そうした契機にできるかどうかは、やっぱり人民のたたかいにかかっているわけです。

 新型コロナ・パンデミックは、実に深刻な困難と犠牲を私たちに強いています。同時に、いまの情勢を大くくりにとらえるならば、まさに、日本でも世界でも、歴史の大きな転機に、私たちは生きているといえると思います。

 そういう転機にあたって、いま国民のなかに起こっている前向きの深い変化をとらえて、それを「特別月間」における党員拡大を根幹にした党勢拡大にぜひ結びつけて、大きな成功をかちとろうじゃないか、ということを呼びかけまして、発言といたします。ともに頑張りましょう。(拍手)


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