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2020年8月8日(土)

主張

政府開発援助

貧困解消めざす協力に転換を

 日本の政府開発援助(ODA)によるアフリカ、モザンビークの農業開発計画「プロサバンナ事業」が現地の反対運動を受けて中止に追い込まれました。日本とブラジルがモザンビーク政府に協力して農業を大規模化し輸出用穀物の生産拠点を建設する構想でした。住民の意向を無視した事業の中止は当然です。日本のODAには本来の目的を踏み外した大きな問題があります。途上国の自立的発展に寄与し、貧困の解消をめざす援助に転換する必要があります。

あり方ゆがめる安倍政権

 この事業は2011年に開始され、日本の税金約35億円が投じられました。安倍晋三首相も14年のモザンビーク訪問で推進を確認しました。これに対して、現地の農民が「小農の土地や水が奪われ、貧困が深刻化している」と反対し日本のNGOが支援してきました。農民組織の代表が来日して事業の停止を要請し、日本共産党を含む超党派の国会議員が事業の中止を求めていました。

 事業は、現地農民の声を聞くことなく進められ、反対派の農民、市民が暴力や脅迫など人権侵害を受けているとの訴えもありました。日本のODA実施機関、国際協力機構(JICA)が現地コンサルタントを使って反対派の排除など市民の分断を図っていたことが発覚しました。モザンビーク弁護士会は、事業の進め方が同国憲法の「知る権利」に違反していると裁判所に提訴し、主張を全面的に認める判決が確定しています。

 プロサバンナ事業の中止は日本のODAのゆがんだ姿を浮き彫りにしています。さらに安倍政権が15年に閣議決定した「開発協力大綱」はODAを「外交政策の最も重要な手段の一つ」として日本の「戦略的重要性」を踏まえることとしました。相手国の経済発展を「日本経済の力強い成長」につなげることも掲げました。

 ODAは途上国の自主的発展を支援するための協力です。日本の外交戦略の手段に利用するのは本末転倒です。また、日本の経済成長を目標とし、大企業の海外進出を整備する開発協力にしたのでは援助対象国の自立的発展を損ないかねません。モザンビークへのODAについて日本政府は、天然資源や農業分野で日本企業の投資環境を整備するとしています。

 国連の「持続可能な開発目標」(SDGs)は30年までに極貧や飢餓を根絶することをめざし、先進国と途上国の格差の是正、豊かで公正な社会の建設を目標としています。持続可能な開発を実現するために経済、社会、環境の三つの側面の調和を求めています。これに役立ってこそ、日本のODAは役割を果たすことができます。

自主的発展への貢献こそ

 新型コロナウイルス感染症の世界的まん延で途上国援助はいっそう重要になっています。日本の20年度ODA予算は5610億円です。1997年度の最高時から半減しています。日本は、国連が2000年代にミレニアム開発目標の達成に取り組んでいる時期に主要国の中で唯一、ODAを減らしてきました。先進国の目標として国際的に合意された国民総所得比0・7%(2018年0・28%)に増額することが求められます。同時に、途上国の自主的、自立的発展と世界平和に貢献する姿に改めることが不可欠です。


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