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2020年9月4日(金)

安倍政治継承 大合唱の異常

自民党総裁選、深い劣化

選挙構図固まる

 安倍晋三首相の辞任表明を受けて行われる自民党総裁選(8日告示、14日投開票)では、石破茂元幹事長、岸田文雄政調会長、菅義偉官房長官が立候補を表明し、選挙の構図が固まりました。その中で「安倍政治」継承、礼賛の流れが強まっています。

 総裁選に向けては8月30日のNHK「日曜討論」で世耕弘成参院幹事長が党を代表し「安倍政権の路線をしっかり継続していく必要がある」と発言。2日の立候補表明会見で菅氏は「安倍総裁が全身全霊を傾けて進めてこられた取り組みをしっかり継承する」「安倍政権の改革の歩みを決して止めるわけにはいけない」と繰り返し表明。記者からは「安倍総理の発言を聞いているようだ。総理として目指す政治は安倍政治の単なる延長なのか」との質問が飛ぶほどでした。

 同日には自民党の細田派、麻生派、竹下派のトップ3人がそろって菅氏への支持を表明する異例の会見を開きました。この3派閥に加え二階派、石原派も菅氏への支持を決め、自民党内の7派閥のうち5派閥が菅氏支持へ雪崩を打つという状況。まさに自民党全体で「安倍政治継承」の流れが強まるという異様な光景です。

 安倍政権は、多くの国民が反対するなかで違憲の安保法制=戦争法を強行成立させたことをはじめ立憲主義、民主主義を踏みにじる暴政を続けました。2度の消費税増税で暮らしを痛めつけ、さらには森友・加計学園、「桜を見る会」疑惑などの「国政私物化」問題でモラル崩壊は極限に達し国民の信頼を失いました。

 新型コロナウイルス感染症の拡大が続く中、混迷と無策への国民的批判が拡大。朝令暮改を繰り返しました。その中で火事場泥棒的に狙った検察私物化の動きにも批判が集中して断念に追い込まれました。

 野党による国会の延長要求からも、臨時国会開会要求からも逃げ続け、記者会見も辞任表明までの2カ月半開きませんでした。安倍首相の退陣の直接の理由は健康悪化ですが、深刻な政治的行き詰まりの結果にほかなりません。

 ところが菅氏は2日の会見で、アベノミクスの反省点にはまったくふれず、株価上昇などを誇り「しっかりと責任をもって引き継いで、さらに前に進めていきたい」と発言。「森友学園」問題では、公文書改ざんを強いられて自殺した財務省近畿財務局職員の妻が真相解明を求めて裁判を起こしているにもかかわらず再調査を拒否。加計問題、「桜を見る会」疑惑でも説明する態度は見せていません。

 何度も反対の意志を示してきた沖縄の民意と地方自治を踏みにじり、担当相として強権的に名護市辺野古の米軍新基地建設を進めてきたことにも全く反省の言葉はなく、新基地建設推進の姿勢を改めて示しました。

 その菅氏を中心に自民党内で「安倍政治」継承の大合唱が広がっている―。結局、安倍政権の7年8カ月間は「安倍1強」と言われる状況のもと、自民党全体が立憲主義破壊と私物化政治を推進してきた以上、「転換」を言えず、明確な反省、批判の声も出てこないという深い退廃と劣化を示しています。

 「安倍政治」を誇るばかりで無反省のまま進もうとする自民党。行き詰まった「安倍政治」を続けるほかに選択肢をもたない二重の行き詰まりを示しています。(前野哲朗)


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