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2020年9月10日(木)

主張

生活保護費

コロナ危機でも減額するのか

 厚生労働省が生活保護費の減額を10月から行おうとしています。安倍晋三政権が2017年12月に決定した生活保護費の段階的な削減の一環です。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、経済的に困窮する人の生活は一層苦しくなっています。仕事を失う人も増加しています。削減を決めた3年前とは、国民生活の状況が大きく変わっています。それにもかかわらず、暮らしを支える「最後のセーフティーネット(安全網)」を弱める生活保護費削減を予定通り実施することは、あまりに乱暴です。10月からの削減は中止し、拡充に転じることこそ必要です。

利用世帯全体の67%直撃

 10月から予定されている生活保護費の削減は、食費や水光熱費など日常生活にあてられる「生活扶助」についてです。18年10月から3年かけて160億円をカットする計画の最後の削減となります。

 同計画の実施によって減額されるのは、利用世帯全体の67%にのぼります。最大5%削減される世帯も生まれます。世帯構成や居住地域で違いはありますが、75歳の単身世帯では月約7万5000円が約7万2000円に、中学生と小学生がいる40代夫婦では月約20万5000円が約19万9000円に、それぞれ減らされます。

 すでにギリギリの生活をしている利用者には、感染防止のためのマスクや消毒液などの出費が重くのしかかっています。猛暑でも電気代が増えないようにエアコン使用を我慢したり、水道代節約のためシャワーや入浴の回数を減らしたりする人が数多くいます。このような人たちの生活扶助をさらにカットすることは、生活苦に追い打ちをかけるだけでなく、命と健康にかかわる大問題です。

 コロナ禍の雇用悪化で失業者は増加しており、生活保護の果たす役割はますます高まっています。国民が公的な助けを必要としている時に、“すでに決まっているから”と生活扶助を削ることは、思考停止という他ありません。

 安倍首相は12年末の政権復帰直後から生活保護費の大削減に乗り出し、13年8月から3年かけて生活扶助を約670億円削減しました。過去最大の削減です。現在実施されている生活扶助の削減も過去2番目の規模です。社会保障費の自然増を機械的にカットする方針に沿ったものです。生活保護は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とする憲法25条に基づく制度で、国民の最低生活の基準にもなっています。生存権保障の土台を掘り崩してきた安倍政権の責任は重大です。安倍首相退陣とともに、生活保護をはじめとする社会保障費削減路線を断ち切る時です。

「国民の権利」として

 生活保護改悪に反対する国民のたたかいは、生活扶助削減は違憲と訴える裁判が全国で取り組まれるなど広がりをみせ、政治も動かしています。日本共産党の田村智子副委員長の国会質問に安倍首相は、生活保護は権利と認め「ためらわずに申請してほしい」(6月15日の参院決算委員会)と答えました。この答弁を受け厚労省は「生活保護の申請は国民の権利です」と記したリーフレットを作成しました。周知徹底と積極的活用が求められます。生活に困った人が安心して利用できる生活保障の仕組みへさらなる改革が不可欠です。


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