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2020年12月28日(月)

主張

マイナンバー

カードの取得を押し付けるな

 菅義偉政権がマイナンバーカードの普及を一気に進めようと躍起になっています。2022年度末までに全国民に持たせることを方針に掲げ、21年3月から健康保険証との一体化を開始します。運転免許証との統合も計画しています。マイナンバーカードの利用を国民生活のさまざまな分野に拡大することには、個人情報の集中や国家による一元管理の危険が指摘されています。国民が望んでいるわけではない全員取得を押し付けるべきではありません。

コロナ禍に乗じて全員に

 マイナンバーは住民登録した全ての人に12桁の個人番号を割り振り、社会保障、税、災害対策の3分野で、個人情報の特定、確認ができるようにする仕組みです。マイナンバーカードの取得は任意です。16年1月の交付開始から5年近くたつのに普及率はようやく23%です。国民が必要性を感じておらず、個人情報漏えいの危惧も強いので普及が進みません。

 菅政権は、コロナ危機のもとで給付金などの行政手続きをすみやかに行うためにデジタル化の必要性が痛感されるようになったと言います。特別定額給付金の支給が混乱した原因は、政府の方針が定まらず決定が遅れた上、給付手続きへの利用を想定していなかったマイナンバー制度を無理やり使わせたことにあります。行き詰まったカード普及をコロナ危機に乗じて一気に進めようとするのは強権的なやり方です。

 菅政権はマイナンバーカードの全国民取得を「デジタル政府・デジタル社会」構築の大前提としています。行政手続き、年金や公金の給付、学校教育での活用、各種免許や国家資格証など生活のあらゆる分野でマイナンバーカードを使ったデジタル化を進めようとしています。「役所に行かずにあらゆる行政手続きができる」と利便性を強調します。

 しかし、デジタル機器を使いこなせない人は行政サービスから取り残される恐れがあります。住民が役所に行くのは事務手続きのためだけではありません。「効率化」を口実に窓口が廃止、縮小されれば相談も難しくなります。

 菅政権が進める行政のデジタル化の結果、所得や資産、医療、教育など膨大なデータが政府に集中し、国家による個人情報の管理が進むことになります。政府は来年1月に召集される通常国会に個人情報保護法改定案を提出する方針です。現行法は民間事業者、行政機関、独立行政法人のそれぞれで別の法律です。3法を統合し、関係機関が個人情報を容易に共有できるようにします。個人情報を分散管理し、なるべく集約できないようにして保護を図ってきた流れを変える危険な動きです。

急ぐ道理も必要もない

 もともとマイナンバー制度は「行政運営の効率化及び行政分野におけるより公正な給付と負担の確保」(マイナンバー法第1条)を目的としています。社会保障の給付と税、保険料の負担を個人ごとにわかるようにし、給付を抑制して国の財政や大企業の負担を減らすことを狙っています。根本的に是非を問い直すべき制度です。

 マイナンバーカードの全国民取得をコロナ危機の中で推進する道理も必要性もありません。政府が今なすべきことは医療と暮らし、営業に対する抜本的な支援です。


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