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2021年1月8日(金)

主張

緊急事態の再宣言

危機招いた大失政に反省ない

 新型コロナウイルスの新規感染者の激増が続く中で、菅義偉政権が緊急事態宣言を出しました。東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県を対象にし、期間は2月7日までにしました。飲食店の営業時間短縮の要請などが柱です。ところが、時短要請に実効性をもたせるための要である十分な補償はありません。焦眉の課題である検査・医療体制を抜本的に強化する財政支援もとりません。国民に大きな苦難を強いる措置をとるというのに、あまりに無責任です。菅政権は、危機を深刻化させた大失政を反省し、コロナ対策の根本的転換をはかるべきです。

疑問・不安尽きないまま

 今回の緊急事態宣言によって、4都県では飲食店の営業時間を午後8時までにすることを要請するほか、テレワークの徹底、午後8時以降の不要不急の外出自粛、大規模イベントの人数制限などを求めます。幅広い業種に休業・施設使用制限を要請した昨年4~5月の緊急事態宣言と比べ対象を狭めました。しかし、これで感染の抑制に転じることができるのか。国民の不安と疑問は募ります。

 専門家からは、これらのやり方では1カ月で感染抑制は極めて困難という指摘が出されています。4都県の他にも感染状況が悪化し医療体制がひっ迫してきている道府県も増加しているのに、それらが対象にならない根拠もはっきりしません。感染を広げる場も必ずしも飲食店などに限ることができないのが実態です。菅首相が昨年末の感染者数の急増まで宣言は必要ないと言い張ってきた理由も明確になっていません。

 ところが、政府からは疑問について納得できる説明がありません。宣言に先立ち衆参の議院運営委員会で短時間の質疑が行われましたが、菅首相は野党の出席要求を拒みました。昨年4月の緊急事態宣言の際、当時の安倍晋三首相は出席し不十分ながらも答弁に立ったことと比べても異常という他ありません。宣言決定後の記者会見も首相の話は通り一遍で国民に届く言葉はありません。行政府の長としての資質が問われます。

 いまの感染状況は、昨年の緊急事態宣言の時よりも、はるかに深刻です。しかも、首都圏で「感染爆発相当」という状況を引き起こしたのは、「Go To キャンペーン」に固執し、人の流れを止めようとしなかったことに象徴される菅政権の失政によるものです。

 自らの無為無策と逆行によって、国民に重大な困難を伴う行動変容を求める緊急事態宣言を再び出すことに立ち至ったことへの真摯(しんし)な反省の表明こそ必要です。

国民に責任押し付けるな

 菅政権は自らの行動を即刻改めるべきです。なにより営業が安心して続けられる十分な補償の実施が急務です。感染リスクの高い高齢者施設などでのPCR検査抜本拡充のための全額国庫負担に踏み切る時です。コロナ対応で苦闘が続く医療機関への減収補填(ほてん)と財政支援強化が不可欠です。これまでの姿勢を転換することなく、国民の協力も信頼も得られません。要請に応じられない業者の店名公表のような「制裁」は、国民同士の対立と分断しかもたらしません。国民に責任を押し付ける懲罰的な対策は逆効果です。十分な補償こそが、国民の理解と納得のための最大の保障です。


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