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2021年2月19日(金)

主張

五輪会長に橋本氏

反省なき看板掛け替え許せぬ

 東京五輪・パラリンピック組織委員会は、女性蔑視発言で辞任した森喜朗会長の後任に橋本聖子五輪担当相を選びました。橋本氏は早くから後継の名前が挙がっており、結論ありきの交代劇です。選考に携わる委員も議論も会長決定後まで非公開で「透明性のあるプロセス」(組織委事務局長)と言うには無理があります。なにより森氏暴言をすぐに問題と認識できず、会長続投を容認した組織委の責任や体質は検証されていません。問題の根本にメスを入れないままの看板の掛け替えで、五輪開催を推進することは許されません。いま必要なのは五輪中止の決断です。

組織委の対応の検証なく

 「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと女性をおとしめる発言をした森氏は、辞任表明(12日)の際も、「意図的な報道があった」と述べるなど最後まで無反省でした。森氏の居座りを容認した組織委は責任を免れることはできません。

 批判を浴びたのは森氏だけではありません。森氏の発言があったのは、日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会(3日)という公の場です。森氏が許し難い発言をした際、居合わせたメンバーから笑いも起きていました。女性差別を容認する風潮を生んだ構造的問題の根深さを徹底検証し、一掃することが、新会長選出の大前提となるはずです。森氏の発言の再発防止を求めたオンライン署名15万人以上を組織委に提出した若者たちは、「森氏個人の問題に矮小(わいしょう)化せず、社会全体の問題でとらえて」と訴えました。

 しかし、新会長選出は、真剣な反省が欠落していると言わざるをえません。それどころか一時、森氏が後継指名をする密室談合が表面化し、世論の怒りをかきたてました。組織委に次の会長を選ぶ「検討委員会」を設置しましたが、公式に発表されたのは座長の御手洗冨士夫・元経団連会長のみでした。人選基準も、「男女平等の五輪憲章の理念を実現できる」などの一般的項目だけです。橋本氏がこれらの基準をどのように満たしているのか、国民には分かりません。橋本氏は2014年、フィギュアスケート男子選手へのハラスメント問題が報道されたこともあり、適格性への疑念は消えません。

 橋本氏が、森氏に会長辞任を求めなかった菅義偉内閣の現職閣僚から横滑りしたことの是非も問われます。自身も、森氏への辞任要求を口にしませんでした。橋本氏は1995年の参院選で自民党議員に初当選しましたが、政界入りを勧めたのは森氏です。橋本氏が所属してきた派閥も森氏の出身派閥です。2019年9月に安倍晋三内閣で五輪担当相として初入閣した際には、森氏と「父」「娘」と呼び合う姿がメディアで伝えられました。ジェンダー平等実現に対する橋本氏の認識や資質についての疑問は尽きません。

今夏の五輪中止決断急げ

 菅政権は、橋本氏の会長選出を契機に、今夏の五輪開催へ向け準備を加速させる構えです。中止を求める国民多数の声に真っ向から逆らう姿勢という他ありません。島根県知事も、政府や東京都のコロナ感染対策の立ち遅れの中で「現在の状況では開催すべきではない」と表明しています。五輪中止を早期に決定し、コロナ対策に全力を傾ける時です。


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