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2021年2月21日(日)

「N高政治部」 志位委員長の特別講義(1)

資本主義の疑問点

21世紀も続けていいのか

 日本共産党の志位和夫委員長は17日、インターネットと通信制を活用した私立高校「N高等学校」の「政治部」特別講義で、生徒からの質問に答えて、資本主義への疑問点や共産党がめざす社会主義・共産主義、「アメリカ言いなり」「財界中心」をただす民主主義革命、憲法9条と自衛隊、天皇の制度などについて語りました。1万4602人がリアルタイムで視聴し、大好評だった特別講義の内容を連載します。


 特別講義の司会はN高特別講師の三浦瑠麗(るり)氏(国際政治学者)。前半は、高校生から事前に寄せられた質問に志位委員長が答える形で進行しました。

Q 資本主義の今の形への疑問点を、幸福度などの観点から伺いたいです。

超富裕層が資産を増やす一方で、多くの人々が困窮に陥っている

写真

(写真)志位和夫委員長(右)と司会の三浦瑠麗さん

 志位 資本主義の疑問点はというご質問ですが、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)がおこり、そのなかで資本主義がもっていた矛盾が噴き出しているというのが現状です。「資本主義をこのまま続けていいのか」という疑問が、立場の違いを超えて、いろいろな方から語られているのが新しい特徴だと思います。

 それは大きく言って二つ、あると思います。

 一つは、貧富の格差の拡大という問題です。これはもともと資本主義のもとでずっと広がってきたものですが、パンデミックが起こってこれがいよいよひどいものになっています。

グラフ:世界と日本のビリオネア(億万長者)の資産額の推移
パネル1拡大図はこちら

 これは、アメリカの雑誌の『フォーブス』に掲載されたデータから作ったグラフ(パネル1)です。世界と日本のビリオネア――資産10億ドル以上の超富裕層の資産がどうなったかという推移を示しています。

 黄色い棒が、世界のビリオネアの資産の推移ですが、この1年間で8・0兆ドルから12・8兆ドルに1・5倍になっています。赤い棒は、日本のビリオネアの資産の推移ですが、この1年間で12・2兆円から24・4兆円に、ちょうど2倍になっています。コロナ危機のもとで、超富裕層は世界全体では1・5倍、日本では2倍に資産を増やしているのです。こういう現実が一方であります。

 他方で、多くの人々の暮らしはどうなっているか。多くの学生のみなさんが、アルバイトがなくなり学費が払えない、食うや食わずの困窮状態に陥っています。文部科学省の調査でも、コロナのために休学・退学を余儀なくされた学生が5800人にものぼります。

 女性の困窮が深刻です。野村総研の試算では、コロナで仕事がなくなったり、減ったりしながら、休業手当を得ていない、「実質的失業者」になっている女性が、90万人にのぼっています。多くの女性が、小売業、飲食業、宿泊業などで、パート・アルバイトなど不安定な非正規で働き、いまたいへんな困窮に陥っているのです。

 子どもの貧困も深刻になっています。もともと子どもの貧困は、日本は特にひどくて、7人に1人の子どもが貧困のもとにおかれ、母子家庭の場合は2人に1人が貧困という状況です。コロナで多くの子どもたちが、いっそうつらい状態に追い込まれています。

 世界と日本のビリオネアが資産をどんと増やす一方で、困窮者が広がっている。これが今の資本主義の現実なのです。こんな社会でいいのかということが、問われているのではないでしょうか。

地球環境の破壊――新しい感染症の多発、きわめて深刻な気候危機

 志位 もう一つの大きな問題は、地球規模での環境破壊です。

 いま新型コロナが大問題になっていますが、この30年間で少なくとも約30の新しい感染症が世界で出現しています。エイズ、エボラ出血熱、SARS(重症急性呼吸器症候群)、鳥インフルエンザ、そして今度の新型コロナウイルス感染症などです。出現頻度が高いわけです。これは人間の経済活動によって自然環境が壊されてきた結果なのです。生態系が壊され、熱帯雨林が破壊され、動物が持っていたウイルスが人間に移ってきて、新しい感染症が次々生まれています。これが資本主義のもとで起こっているわけです。

図:環境省「2100年 未来の天気予報」
パネル2拡大図はこちら

 さらに人類の前途にとってたいへんに深刻な問題が、気候危機という問題です。これは環境省のつくった「2100年の夏の天気予報」(パネル2)というものですが、いまの地球温暖化が抑えられなかったらどうなるかを示すものです(三浦氏「すごく高い温度ですね」)。ええ。日本列島が、沖縄をのぞいてすべて最高気温40度以上です。

 それからもう一つ、台風がスーパー巨大台風になって、「中心気圧870ヘクトパスカル、瞬間最大風速90メートル」、こういうスーパー巨大台風がどんどん襲ってくることが予測されています。

 すでに人間の経済活動によって、産業革命時と比較して、地球の平均気温は1度上がってしまっています。これを「パリ協定」では「1・5度以内」に抑えなければならないとなっているのですが、現在提出されている各国の目標の合計では、21世紀末には3度上がってしまうというのです。そうしますと灼熱(しゃくねつ)地獄のような世界になってしまう。

 これは文字通りの、気候危機です。これをどうするのかという問題が待ったなしで問われています。

“多くの人たちの不幸の上に巨大な富が築かれる”というシステム

 志位 「幸福度の観点から伺いたい」というご質問でしたね。もちろん資本主義のもとで人類は、いろいろな巨大な進歩をかちとってきましたが、今お話しした格差の問題、環境の問題を考えますと、一言で言って、資本主義というシステムは、“多くの人たちの不幸の上に巨大な富が築かれる”というシステムだと思います。

 ですから、私は、このシステムを21世紀もずっと続けていいのかということが、いま問われていると思います。

 お話しした資本主義のいろいろな矛盾の根っこには、無制限に利潤――もうけを増やす、そのために「生産のための生産」に突き進む、資本主義の「利潤第一主義」の矛盾があります。

 このシステムを乗り越えて、そのさきの社会に進む、私たちはこれを社会主義と呼んでいるのですが、世界史的にいうと社会主義の出番の時代が、大局的にはやってきたと考えています。

金融経済が実体経済から離れて肥大化していくという異常な事態

 志位氏の発言に対し司会の三浦氏が「確かに最近、資本主義に対する見直しという文脈で、環境問題に対する関心が高まっています」と応じました。三浦氏は、超富裕層の資産が急増していることにかかわって、実体経済と金融経済の隔たりについて聞きました。

 志位 超富裕層が短期間にこれだけ富を増やしたのは、政府と中央銀行がどんどんお金を出し、そのお金の行き先がなくなって富裕層のところにたまっているところに原因があります。国民のところにお金が回らないわけです。

 一方で中央銀行などがお金を出して株価が急騰し、富裕層はもうかるのですが、国民の側は、消費も、雇用も、営業も危機的です。たとえば飲食店は営業時間短縮が強いられ、休業せざるを得ないお店も多いという、本当につらい状態が続いています。もうこれ以上自粛を続けたらお店がもう持たないという悲鳴がたくさん日本列島であがっています。

 実体の経済はとても苦しいですよね。困窮者がどんどん増える状況がある。ところが金融経済――マネーゲームの方はとても盛んで、そっちの方はどんどんもうけていく。たいへんな乖離(かいり)が生まれています。

 資本主義というシステムの中で、金融経済が実体経済から離れて独り歩きし、肥大化していくという異常な事態が、いまあらわれているのです。

 (つづく)


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