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2021年4月19日(月)

主張

デジタル関連法案

プライバシー権侵害は明白だ

 菅義偉政権が提出したデジタル関連5法案が参院で審議入りしました。個人情報保護の基本理念を欠いたまま、国や自治体が集めた個人情報を民間企業などが利活用しやすい仕組みを導入するものです。デジタル技術が国民生活を便利にするためには、自分の情報がどう管理、利活用されているかを知り、意思に反する利用を拒否する、個人情報の自己コントロール権やプライバシー権の保障が不可欠です。国民の権利保障に逆行する法案は廃案しかありません。

個人情報の提供をさらに

 14日の参院本会議では日本共産党の田村智子政策委員長が、米軍横田基地の夜間飛行差し止めを求めた訴訟の原告情報を防衛省が外部に提供しようとしていたことを告発しました。国を相手取った訴訟の原告の個人情報を国が勝手に第三者に流すなど、市民活動の萎縮を狙った重大な人権侵害です。

 衆院の審議では、政府系金融機関の住宅金融支援機構が、名前などをわからないよう加工した約118万人分の個人情報を民間銀行に提供したことが明るみに出ました。いずれも2015年、16年の個人情報保護法制改定によって、匿名加工をすれば個人情報を本人の同意なく第三者に提供できるようにしたために起きたことです。

 菅政権は、政府が運営するウェブサイト「マイナポータル」を入り口に、民間サービスを含めた個人情報の連携を進めようとしています。行政が持つ個人情報の民間提供について平井卓也デジタル改革担当相は「国民が利便性を感じるものに関してはどんどん広がっていく」と答弁しました。歯止めない拡大の危険があります。

 5法案の中心をなすデジタル社会形成基本法案は、国と自治体の「情報システムの共同化・集約の推進」を掲げ、デジタル庁が整備、監理するガバメントクラウド(インターネットを通じた国、自治体の行政情報システム)を全国の自治体に使わせようとしています。そこでは膨大な個人情報が扱われます。

 同法案の基本理念に「個人情報保護」の文言がないことをみても、プライバシー権をないがしろにして利活用を優先していることは明白です。

 5法案の一つである整備法案は、個人情報保護法を改定し、個人情報をさらに利活用しやすいよう規制を緩和します。

 現行法制は民間、国の行政機関、独立行政法人それぞれに個人情報保護法を定めています。同法案はこれを一元化します。自治体が制定する保護条例には国が縛りをかけ、自治体独自の厳しい規制を認めないようにします。

審議するほど重大問題

 国、自治体の情報システムの「共同化・集約」は、5法案と別建ての情報システム標準化法案とあいまって、自治体の業務内容を国のシステムに合わせることを促します。自治体独自の施策を抑制し地方自治を侵害しかねません。

 菅政権が設置しようとしているデジタル庁は人員500人のうち100人以上が民間出身者です。政府は兼業、副業、リモートワークも可能としています。特定企業に都合の良いルールづくりなど官民癒着がさらに広がります。

 審議するほど重大な問題が判明するデジタル関連法案の成立を阻む世論を広げることが必要です。


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