2024年11月23日(土)
きょうの潮流
おれたちを人間として扱うように要求する―。大手自動車メーカーの工場で働く4人の非正規行員は、ある出来事をきっかけに労働組合をつくります。労働者は企業の利益のために生きているんじゃないと▼太田愛さんの小説『未明の砦(とりで)』は現代の労働問題を主軸におきました。使い捨ての働かせ方に疑問を抱き環境を変えようと立ち上がった若者たち。それに対し共謀罪を適用しようとする公安や巧妙なわなを仕掛ける会社。その群像劇をスリリングに描いています▼ドラマ「相棒」などの脚本も手がけた太田さんの新聞連載を単行本にしたもので、労働関係者をはじめ幅広い層に読まれています。小説からは戦後の労働法制の変遷とともに、世界から立ち遅れたこの国の実態がうかびあがってきます▼派遣事業や非正規雇用の拡大、長時間労働や過労死、派遣切りや雇い止め、いっこうに上がらない賃金、疲れ果て心を病んで自死する労働者…。現実に突き動かされるようにこの物語を書いたといいます▼生き延びるためだけに人生を切り売りし、助けを求める先もわからずに悩み苦しむ若者たち。実際に労組の加入率は過去最低の16・3%となっています。運動を分断する動きも続くなかで労働者の連帯をつくることは大きな課題に▼おととい結成35周年をむかえた全労連は、仲間を増やし要求を実現する労働組合を増やすことを今年の運動方針にもかかげています。働く喜びとともに人間らしく生きられる社会を。きょうは勤労感謝の日です。