2004年10月13日(水)「しんぶん赤旗」
「これまでの方針どおり改革を断行し、自信と誇りに満ちた活力ある社会を築く」―「改革」を繰り返した小泉純一郎首相の十二日の所信表明演説。国民の願いが届いた内容だったのでしょうか。
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「米軍ヘリ墜落事故にも触れず、『米軍を削減する』ともいわなかった。県民の願いには耳を傾ける気がないことを示したものだ」
所信表明をラジオで聞いた沖縄県平和委員会の大久保康裕事務局長は、こういって憤ります。
沖縄では、イラク出撃準備中の米軍ヘリ墜落事故で、基地撤去を求める世論が強まっています。
なのに事故には一切触れず、在日米軍再編の協議を米国と進めると表明。しかも、これまでの協議でとりざたされているのは、沖縄の海兵隊の一部を本土移転する案など、“基地負担のたらい回し”でしかありません。
大久保氏はいいます。「米国は、再編で先制攻撃戦略のもとでの機能強化を目指している。一部を本土に移転すれば、自衛隊との共同使用基地が増え、在日米軍全体では強化になる」
首相の米国いいなりは、イラク問題でも浮き彫りになりました。
ブッシュ米政権がイラク戦争の口実にしたイラクの大量破壊兵器について、米調査団が「なかった」と結論付けました。
米国の主張をうのみにして、イラク戦争を支持し、戦争に続く占領支配の支援のため、自衛隊派兵も強行した小泉首相は、この問題に正面から答える責任がありました。
ところが、所信表明での言及はなし。逆に、イラク派兵を継続する考えまで表明しました。
小泉首相は、改悪年金法の実施による十月からの厚生年金保険料引き上げにはまったく触れませんでした。国民の「痛み」も、七―八割の「白紙に戻せ」という世論も「どこ吹く風」です。
それどころか、自民、民主、公明が先の通常国会で結んだ消費税増税に道を開く「三党合意」にもとづく協議の開始を呼びかけました。
さらに首相は、公的保険の診療と保険外診療を併用する「混合診療」の「解禁」を打ち出しました。医療への国の負担を減らす一方、国民負担を増大させるものです。
すでに、健保本人の三割負担、老人医療費の負担増による医療改悪で、必要な医療を受けられない人が増えています。「混合診療」の「解禁」で、「命のさたも金次第」という状況がますます広がることは明らかです。
神奈川県から国会要請にきた年金者組合厚木支部の宇佐美ハヤミさん(73)は「いま、お年寄りの間では『ピンコロ』、ピンピンしている元気なうちにコロッと死にたいという気持ちが広がっているんです。介護や医療はお金がかかりますから」と話します。
首相は「われわれの新しい課題は、『長生きを喜べる社会』をつくること」といいましたが、国民にとっては、「長生きするな」と言われているに等しいことです。
小泉内閣が「改革」の本丸と位置付ける郵政事業の民営化。小泉首相は次期通常国会に法案を提出し、二〇〇七年四月から実施する考えを示しました。「郵政事業は四十万人の公務員でなければできないのか」とのべ、「郵便貯金、簡易保険の資金三百五十兆円を民間で効果的・効率的に使われる仕組みが必要」と、民営化の狙いが銀行・生保業界の要求にこたえたものであることを明言しました。
「小泉首相の民営化は国民の利益・利便性を切り捨てるものです」。こう指摘するのは、郵政産業労働組合中央本部副委員長の砂山洋一さん。
「国民に欠くことのできない郵便制度は、一日も休むことなく低料金で確実な配達を維持し、貯金・保険は安全安心の金融窓口として、日常生活に深く根ざしています。国民の要求はこの生活に必要なサービスの充実であり、安定した事業運営です。営利目的に運営される民営化ではできません」
民営化は「国民に大きな利益をもたらす」(「郵政民営化の基本方針」)としていますが、全国の地方議会から“異議あり”の声が相次いで上がっています。過疎地の郵便局の統廃合に懸念が広がる北海道では、「民営化反対」「郵政公社の存続」を求める意見書可決が全市町村の八割に達しています。都市部でも、窓口配置の見直しがうたわれており、郵便局の統廃合などが避けられません。
結局、民営化とは、全国に張り巡らされた国民の財産である郵便ネットワークをズタズタにし、国民だれもが等しくサービスを受けられる「ユニバーサルサービス」を大幅に後退させるものです。
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(初めて国会で所信表明を聞いて)
「やればできる」などと、自分がやってきた「改革」の自賛や空虚なことばが並んでいるだけ。青年の就職難や長時間労働で過労死が増えているというのに、国民の実態に心を寄せる姿勢は見られません。少子化がまるで自然現象のようにいっていました。
沖縄の基地問題やイラク戦争にほとんどふれていない。結局、痛みの押し付けと日米軍事同盟強化の方向に、国民を引き込んでいくものにほかなりません。小泉政治と対決して頑張る決意を新たにしました。