2004年1月16日(金)「しんぶん赤旗」
陸上自衛隊のイラク派兵先遣隊の出発を前に、派兵第一陣、第二陣の中心部隊が駐屯している北海道では、派兵される隊員の親や家族が、不安な思いで毎日を過ごしています。
娘の嫁いだ自衛隊員がイラクへ派兵されるという母親は、派遣命令後の十日に娘夫婦の訪問を受けました。数時間を過ごしたあと、帰宅しようと車の運転席に座った義理の息子に「体には気をつけてね」と声をかけました。息子は「あとのことをくれぐれもよろしく。妻の面倒を見てください」と寂しそうに言ったため、母親は心臓が止まりそうだったといいます。
母親はそれから毎日、胸が苦しく、食事をしても味が感じられません。
「娘は、イラク関連のニュースを見ないようにしています。何のためにイラクに行くのか。家族には理解できません。派兵の理由は『上司の命令はどんなことがあっても聞かなければならない』の一言です」
義理の息子は、昨年二月ごろから猛訓練で帰宅の機会が減り、十一月に突然、イラクに行くと家族に告げました。正月をはさんでの一週間、年末手当を思いきり使って、母親に靴を買うなど、かつて家族が経験したことのないサービスをしました。
母親は「憲法を無視し派遣命令を出した小泉首相は絶対に許せません。公明党の神崎武法代表は『安全なようだ』というけれども、滞在三時間半で何がわかりますか。お金で人の命は買えません。隊員が亡くなった場合には国が遺族を補償するという条件をつけているけれども、全部国民の税金でしょう。自民も公明も、あの人たちに人間性はありません」といいます。
そして、「殺し合いは絶対に反対です。二十一世紀に入ったのに、どうして海外派兵なのか。隊員がイラクで人殺しに平気になって帰ってくるようになるなら、世の中がどうなるのでしょう。国政がこれ以上、危険な方向に進まないよう何とか止めたい」と訴えました。