2004年1月17日(土)「しんぶん赤旗」
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自衛隊のイラク派兵を進める防衛庁は、「安全確保」を理由に報道統制を強めています。今回の自衛隊派兵が襲撃・戦闘の危険を伴うことを示すとともに、国民の強い派兵反対世論のなかで、都合の悪い情報を覆い隠してしまおうという政府・防衛庁の意図も透けてみえます。
陸上自衛隊の先遣隊派兵命令が出された九日、石破茂防衛庁長官は防衛庁に報道機関の編集責任者を集め、イラクや周辺国に派兵される自衛隊部隊の行動について報道の自粛を求めました。(別項)
前日の八日には、記者やカメラマン百人以上を陸上自衛隊朝霞駐屯地(東京都、埼玉県)に集め、派兵部隊の同行取材のために「訓練」まで行っており、突然の方針転換でした。
石破長官による自粛要請の際に報道機関に配られた「当面の取材について(お願い)」とする文書は、その対象として部隊の位置や活動地域、装備、作戦内容や将来の行動などを挙げています。自衛隊がいつ、どこで何をやっているのか、行動すべてを報道規制の対象にしようとしているのです。
防衛庁は、陸上自衛隊の先遣隊についても、派兵の日時や航空便を公表していません。また、クウェートからいつイラク入りするかも明らかにしない方針です。
しかも、報道の自粛を求める文書では、その対象に「その他部隊が定める事項」も挙げています。仮に、「防衛庁の円滑な業務遂行を阻害する」とみなされた場合、「爾後(じご)の取材をお断りすることになる」ともしており、防衛庁・自衛隊にとって都合の悪い報道を隠し、それを報じた報道機関を排除する考えまで示しています。
同文書では、「可能な限り報道機関への協力を行っていく」とものべています。ところが、防衛庁は十三日、陸・海・空自衛隊の幕僚長の定例会見を十九日以降廃止することを決定しました。「会見の数が他省庁に比べて多すぎる」「質問の少ない会見がある」というのが理由ですが、報道各社の強い抗議を受け、防衛庁は十四日、一転して会見廃止を撤回。各社との協議機関を設け、一月中をめどに結論を出すことになりました。
防衛庁はそれでも、会見廃止の方針自体は変えていません。政府も「防衛庁がそう考えるのなら、よろしいのではないか」(福田康夫官房長官)と容認しています。これに対し、マスコミからは「準戦時体制の報道統制だ」との批判も出ています。