2004年1月19日(月)「しんぶん赤旗」
日本共産党の市田忠義書記局長は十八日午前、報道2001(フジ)、NHK日曜討論にそれぞれ出演し、イラク派兵など十九日召集の通常国会で重要課題にどうのぞむか、各党幹事長と討論しました。両番組には、安倍晋三(自民)、岡田克也(民主)、冬柴鉄三(公明)、又市征治(社民)の各幹事長が出席しました。
NHK日曜討論で司会の山本孝解説委員が、冒頭で「通常国会にどうのぞむか」と聞きました。
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市田 こんどの国会はかつてない重要問題が山積です。なによりも戦後初めて武装した自衛隊が、海外に現に戦闘がおこなわれている地域にいく。いわば二十一世紀の日本の進路にかかわる大問題、これが国会冒頭から大論議になります。それと軌を一にして憲法改悪のための地ならしといいますか、国民投票法案を今国会に提出するという動きもあります。
それから暮らしと営業は深刻で、小泉内閣になって二〇〇二年を起点にして四兆円の負担増、来年度予算を見ますとむこう三年間で新たに三兆円の国民負担増で、合計七兆円。これだけ景気、暮らしが大変なときにそういう負担増が押しつけられようとしている。平和、暮らし、憲法、こういう問題について骨太の議論を、国民の切実な要求にもとづきながら展開していきたいと考えています。
このあとイラク派兵の国会承認が議論になり、自民党の安倍氏は、自衛隊の先遣隊と本隊の派兵承認を一括して国会に求める考えを表明。これに公明党の冬柴氏も「そのような法解釈もできる」と同調しました。民主党の岡田氏は「陸上自衛隊の本隊をだすと政府が決めたうえで承認するかしないかということでなければ、おかしなことになる」「中身もわからない段階で承認できるはずもない」とのべました。
市田氏は次のようにのべました。
市田 先遣隊も本隊の一部だということを政府自身もおっしゃっているわけで、われわれは先遣隊がもうすでにいったことも反対です。
さきほどの国会承認の件ですけれども、実施要項はA4判の三ページです。概要が発表されているだけですよ。それを見ましたら派遣部隊の人数、C130(輸送機)の機数も書いてありません。陸上自衛隊の部隊の人員も書いていません。
全体がいったい何ページあるのか、それは閣僚全部が読んでいるのか、直接たずねますと閣僚のなかでも読んでいる人は限られている。現に戦闘がおこなわれている地域に陸上自衛隊がいく、殺し殺されかねない、いわば日本の進路の曲がり角ともいうべき重大な問題を閣僚全体も知らない。国会にかけるというけれども、概要しか明らかにされていない、そういう状況のもとで承認を求めると。
それから先遣隊が帰国したのち本隊を出すかどうか検討するといいながら(承認だけを求める)、まだ先遣隊がいったところですよね、いったいこれをどうするのか。ちゃんと国会で、本会議で、国会議員全体に趣旨説明もするのか。問題をきちんと議論した上で検討するのが、われわれは出すことに反対だけども、先遣隊の結果をふまえて、どういう状態なのかということを国会で、国民の前に明らかにする。
市田氏は司会者から「承認については本会議でもきちんと審議をやる(べきか)」と問われ、「当然やるべきです」とのべました。
またイラク支援について、「国連を中心にした新しい枠組みで復興支援はただちにできる状況ではない、それまで何もしなくていいのかという反応もあります」と問われました。
市田 何もしなくていいとはいっていません。いまNGO(非政府組織)がいろんな人道復興支援のために活動しています。そういうことをむしろ支援すべきだと思います。何よりも日本政府が、国連の枠組みに移して占領軍は撤退できる方向の外交努力を大いにやるべきだと思います。
自衛隊が人道復興支援と安全確保支援活動をやるわけですけれども、その人道支援も米軍の占領軍の指揮下でおこなうわけですから、あの不当な侵略戦争であるイラクへのアメリカの戦争を真っ先に支持した日本の武装した自衛隊がいくわけですから、たとえ人道支援の旗の下でいっても、それはイラクの国民からしたら、やはりあの米英占領軍と同じ立場に立っているものが来たと(思われる)。(自衛隊派兵で)NGOの人まで活動が困難になっているわけですし、しかも安全確保支援活動は(米軍の)掃討作戦やイラク国民の抵抗を鎮圧する活動まで支援するわけです。武装した米兵の輸送までやるといっているわけですから、それは人道復興支援とは相反すると思います。
このあと通常国会に提案される年金改悪案がテーマになりました。
民主党の岡田氏は「単なる数字合わせ」と批判しました。冬柴氏は「よく決めた」と負担増、給付減の改悪を美化しました。
これにたいし市田氏が反論しました。
市田 当面の問題も、将来の問題もまったく国民の願いにそってない。この案でいきますと保険料を平均的なサラリーマンで毎年一万円ずつ引き上げていくという案です。
給付を(年収の)50%以上確保するというけれども、それだってこれまでよりは減らすわけです。なにか「確保する」というからこれまで通りかというと、いまはもっと59%あるわけで、これは減らす。しかもそれはモデル世帯で50%であって、例えば月額五万円程度の国民年金だけの人だっているわけで、それすら切り下げるということがいま検討されているわけです。ばら色に見なされているけども、結局負担を増やし、給付を減らすというやり方ですから、まったく国民の願いにかなっていない。
基礎年金の国庫負担引き上げ(現行三分の一から二分の一へ)の財源について議論になり、公明党の冬柴氏は、所得税の定率減税の廃止を主張。安倍氏は、道路などのムダ遣いにメスをいれて財源を確保するのは「邪道だ」と中傷しました。
これにたいし市田氏は日本共産党の対案を語りました。
市田 年金への不信が国民の間で広がっているのは、政府がやるべきことをやってこなかったからです。例えば、三分の一から二分の一に基礎年金の国庫負担を増やすというのは、法律の付則で今年中にやると書いてある。それを先送りして、しかも当面は国民への新たな負担で、定率減税をやめたり、年金の財源に年金課税をやるわけでしょう。
二〇〇七年以降は消費税増税を今後の税制の抜本的改革でやるわけです。そうじゃなくて、例えば、無駄な道路をつくり続けるしくみになっている道路特定財源を一般財源化すれば、いくらでも二分の一(引き上げ)にあてられる。道路特定財源は国に入ってくるお金だけでも三兆数千億円毎年あるわけです。一般財源化し、優先順位としては年金にこそあてるべきだと考えています。
つづいて道路公団民営化の政府与党案の是非について各氏が発言。冬柴氏は、同案が九千三百四十二キロメートルの整備計画の全線建設を前提としていることを問われ、「みんなで決めたことだ」と見直す意思のないことをあらためて示しました。安倍氏も、「全部がムダな道路ではない」と開き直りました。
市田 先ほど九千三百四十二キロはいったん決めたことなんだからとおっしゃったけれども、(計画は)決めたこと(であっても)、無駄と浪費にメスをいれようというのが、狙いだったわけです。
小泉「構造改革」の正体見たりという感じがするんです。例えば(計画で整備されていない)残りの二千キロですね、これを全部基本的にはつくる。採算が困難な道路についても「新直轄方式」ですから全額公費です。国が四分の三、地方四分の一ですよ。
それから新会社は民間からの借金で(道路を)建設して、建設後は保有機構に引き継ぐわけですね。新会社は機構から借りて料金収入にもとづいてリース料を払うという。ところがリース料は、いくら建設費がかかったかによってではなくて、料金収入によってということになっているわけですから、赤字路線であっても全然リスクなしで自由につくれるということです。
残りの二千キロ全部つくるのにかかるお金はだいたい十六兆円です。いま借金四十兆円だから合わせたら五十六兆円。これだけ財政が大変だというときに無駄な道路をつくり続けるということを宣言しているのといっしょで、私はまったく改革の名に値しないと思います。
最後に、司会者から国会内での野党共闘について聞かれました。
市田 消費税問題、憲法問題などでは率直にいわせてもらって(民主党は)自民党と基本的に同じ土俵にのっておられるというふうに私たちは見ています。
ただ、当面いまの現状でイラクへの派兵反対とか一致点もあるわけで、そういう点は大いにこれまでどおり誠実に共闘していきたいと、そういうふうに思っています。
市田書記局長が出演した「報道2001」では、イラク問題などとともに、昨年の衆院選後、自民党議員二人が買収容疑で逮捕された問題がテーマとなりました。
政党助成金が原資とみられる買収容疑で逮捕された新井正則衆院議員(自民に離党願提出、議員辞職願提出)や、同じく買収容疑で逮捕された近藤浩前衆院議員(自民を離党、議員辞職)について、自民党の安倍氏は「(二人は)議員辞職をただちに決意した。今後も、こうした身の処し方を求めていく」とのべました。
これにたいし、市田氏は、「選挙は公約や政策を国民の前に示して支持を争うのが当然だ。カネで票を買うのはあってはならない」と強調。「新井議員の場合は政党助成金を使っている。政党助成金は国民の税金で、われわれは受け取っていないが、三百億円を超えている」とのべ、「逮捕されてそれで一件落着で済ましてはダメだ。自民党としても自浄能力を発揮すべきだ」と批判しました。
一方、労組幹部らが違法な選挙運動の契約を結んだとして逮捕され、連座が問題となっている民主党の今野東、鎌田さゆり両衆院議員の問題では、民主党の岡田氏は「電話作戦を有料でおこなった。法律に反すれば反省しないといけないが、電話作戦にアルバイトを雇うことが本来あってはならないことかどうか十分議論していきたい」とのべました。
また、古賀潤一郎衆院議員の学歴詐称疑惑について、岡田氏は「古賀氏が自分で説明するといっているので、見守っていきたい」とのべました。
野党からも選挙違反事件が起きていることについて、市田氏は「残念だ」とのべました。