日本共産党

2004年1月20日(火)「しんぶん赤旗」

改憲首相のご都合主義

首相施政方針演説


 憲法前文をもちだして、またぞろ憲法じゅうりんの自衛隊海外派兵を合理化する。小泉首相は十九日の施政方針演説で、昨年十二月九日の派兵「基本計画」発表の会見でのべ、世論の大きな批判を浴びた暴論を恥ずかしげもなく繰り返しました。ここに首相の政治姿勢が象徴的に示されています。

 首相は演説で「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて…」という憲法前文を読み上げ「平和は唱えるだけでは実現できません」などと強調しました。

 憲法前文で日本国民が内外に誓ったのは、アジアで二千万人、日本で三百万人という犠牲者を出した侵略戦争の惨害を二度と繰り返さないということです。「自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」という憲法前文はまさに自戒の言葉です。戦場であるイラクに武装した自衛隊の地上部隊を派兵し、不法な占領支配を続ける米英軍を支援することが、どうしてその憲法で説明できるというのでしょうか。

 小泉首相は、自民党結党五十周年の二〇〇五年までに改憲案をまとめるよう党に指示しました。歴代首相として初めてタイムテーブルを示して改憲を表明しました。施政方針演説ではふれられなかったものの、今国会では、改憲に道を開く国民投票法案の提出も重大な焦点となります。

 ところが改憲を明言する一方で、自衛隊派兵の合理化には、その憲法をもちだすのですから、これほどの手前勝手、ご都合主義はありません。

 さらに小泉首相は「国際社会における信頼」「国際社会の一員としての責任」などと繰り返しました。しかし首相の目にうつる「国際社会」とは、米国が圧倒的な軍事力で他国を抑圧し、横暴勝手な振る舞いをしてはばからないという社会です。だから、「国際社会」で「責任を果たす」といえばすぐに、米国に対する軍事的な協力―自衛隊の海外派兵しか思いつかないのです。

 しかし現実の国際社会は、米国の一国覇権主義に懸念を深め、批判を強めています。「日米同盟」一辺倒の日本外交がどれほど異常にうつるか、首相には考えが及ばないのでしょうか。

 施政方針演説でも、韓国、中国との「関係発展」は言っても、両国が痛烈に批判する首相自身の靖国神社参拝についてはまったく説明できませんでした。ロシアやEU(欧州連合)との関係にふれても、仏ロ独三国がイラク戦争とそれに続く不法な占領支配を批判していることには一言もありません。

 日本が戦後、不十分ながらも中東諸国をはじめとして世界で培ってきたのは、憲法九条を持つ国としての信頼です。イラクへの自衛隊派兵がそれをも台無しにしかねないことに、どうして気が付かないのでしょうか。(山崎伸治記者)


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