日本共産党

2004年1月22日(木)「しんぶん赤旗」

米一般教書 世界の批判にどう対応

単独主義

 「指導国家」の“責任”

大量破壊兵器

 未発見なのに「立証」


 ブッシュ大統領が二十日に行った一般教書演説は、イラク侵攻に顕著にみられる単独行動主義的な軍事・外交政策への内外の批判に対し、「フセイン政権の存在しない世界は、より安全だ」などとし、イラクに派兵した国の名を列挙し日本を三番目に挙げて反論しました。

 しかし演説では、「米国はいつも正しいと判断することを行う」「米国の指導力が世界を安全にさせた」など、ブッシュ政権の単独行動主義が随所に顔をのぞかせました。米国が正しいと考えることは、どれほど反対されようとも断固として進め、それが指導国家である米国の役割、「召命」だという、神がかりの独善的な考え方です。

 演説は、イラク戦争を改めて正当化しました。しかし、それを証明する根拠は現実にほとんど成り立たないものです。

 ブッシュ大統領は「ケイ報告は多くの大量破壊兵器の存在を立証した」と述べました。ところが、イラク国内で同兵器捜索の調査グループ責任者を務めたケイ中央情報局(CIA)特別顧問が昨年提出した中間報告は、大量破壊兵器を発見できていないことを告白しただけでした。その後ケイ氏自身も辞任の意向を示しており、同兵器発掘作業は事実上、宙に浮いたままです。

 昨年の一般教書演説でブッシュ氏は、イラクが西アフリカのニジェールからウランを購入したとするニセの情報をひろうしてイラク先制攻撃を正当化。それは、大統領のミスリードだと後で大問題となりました。国民を偽った反省もしないで再び大量破壊兵器の脅威をあおっても、説得力はありません。

 内政問題では、昨年第三・四半期の8・2%という経済成長率をよりどころに、「経済はより強くなる」と昨年末から繰り返し唱えている文句を連発しました。しかし、就任以来二百四十万人もの失業者を出し、景気拡大といわれながら雇用拡大に結びついていないのが現実です。イラク戦費や大型減税の影響で膨らむ財政赤字も深刻です。

 演説では、こうした批判にこたえるため、雇用対策では職業訓練の支援充実や貿易の自由化に伴う雇用増などを訴え。財政赤字については、裁量的支出を抑え「五年間で半減させる予算案を提示する」考えを示しましたが、それらが問題解決に結びつくのかは未知数です。

 ブッシュ大統領はまた、同性愛結婚に反対を表明するなど、自身の強力な支持母体であるキリスト教右派を意識した発言を繰り返し演説を締めくくりました。しかし、議場の反応は鈍く、演説は尻すぼみの印象を与えました。

 二十日に公表されたワシントン・ポスト紙とABCテレビの世論調査では、ブッシュ氏は政策では58%の支持を得たものの、「もしも今日、大統領選挙が行われたら、どの候補に投票するか」との設問では、ブッシュ大統領48%、民主党候補46%という結果となりました。

 経済、教育、医療などの内政問題ではブッシュ政権より民主党の政策の支持が上回っています。民主党の候補者選びが混迷しているもとでの結果だけに、注目されています。

 (ワシントン=遠藤誠二)


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