2004年1月23日(金)「しんぶん赤旗」
小泉・自公政権は二十二日、航空自衛隊本隊のイラク派兵を強行しました。自衛隊派兵の「基本計画」では、空自部隊は戦争状態が続いているイラク全土で活動が可能です。しかも、現在イラクに空軍を派兵しているのは、米英以外では豪州だけです。不法な軍事占領を続ける米英軍への支援で重要な役割を担うことになります。
「基本計画」では、空自部隊はクウェートを拠点に、「バスラ飛行場、バグダッド飛行場、バラド飛行場、モスル飛行場等」への輸送業務を行うことになっています。
末尾に「等」とあるように、これら四空港はあくまで例示にすぎません。「これ以外の空港への空輸もありうる」(内閣官房)のです。
イラクの主要飛行場は北部から南部まで、西部の砂漠地帯を除くほぼ全域に分布しています(地図)。しかも、占領軍への攻撃が集中しているバグダッド周辺に飛行場が集中しています。活動地域がサマワ周辺を中心にしている陸上自衛隊とちがって、空自部隊はイラク全土での活動を視野に入れているのです。
石破茂防衛庁長官は昨年、日本共産党の小泉親司議員が「これらの空港を『非戦闘地域』と判断した理由は何か」と追及したのに対し、明確な答弁を避け、「(自衛隊派兵の)『実施要項』で実施する区域を確定するときに、自衛隊が活動する区域は『非戦闘地域』と、安全の確保という二つの要件を満たすことが必要」とのべました。(十二月十六日、参院外交防衛委員会)
ところが同月十八日に公表された「実施要項の概要」では、「非戦闘地域」の認定も、安全性の根拠もまったく示さないまま、「基本計画」同様の空港名が例示されただけでした。
津曲義光航空幕僚長は一月十六日の記者会見で、これまでイラク国内では、米軍のC130輸送機に対する携帯式の地対空ミサイルによる攻撃が複数回あったことを明らかにしました。八日にもバグダッド空港に着陸しようとした米軍輸送機が被弾しています。
同幕僚長は、「地対空ミサイルはまだ相当数残っている」として、今後も十分な警戒が必要なことを強調しました。
イラク特措法では、自衛隊は「非戦闘地域」で活動することになっています。その理由について政府は、「憲法違反とならないための制度的担保」(石破長官)と繰り返し説明してきました。
航空機を標的にしたミサイルが飛び交う戦場のどこが「非戦闘地域」なのか。どこが安全なのか。憲法との整合性はあるのか。まったく説明のないまま、イラク全土になし崩し的に派兵を強行するのは、イラク特措法に照らしても許されません。
「基本計画」では、空自部隊の活動内容として、(1)人道復興支援活動としての輸送(2)これに支障を及ぼさない範囲での安全確保支援活動としての輸送(3)陸上自衛隊の部隊の派遣又は補給等に際しての航空機による輸送−の三点を挙げています。
政府は「人道復興」を強調していますが、占領軍の軍事作戦を支援する「安全確保支援活動」が明記されていることは重大です。
政府は、「安全確保支援活動」として武装米兵の輸送も可能としています。
イラク国内の飛行場はいずれも、米英軍の占領活動の拠点となっており、敷地内には部隊のキャンプが設けられています。なかでも、「基本計画」で例示されている四空港は重要拠点となっています。バグダッドは米英空軍の最大拠点で、モスルには米海兵隊、陸軍空てい師団が、二本の滑走路を有するバラドには陸軍歩兵大隊がそれぞれ駐留。バスラは英軍の拠点になっています。
外務省資料では、米英以外にC130を派遣している国として豪州(二機)、カナダ(三機)が挙げられ、シンガポールが一機を派遣予定となっています。しかし、カナダはイラクの軍事占領に反対で、部隊を常駐させていません。シンガポールも派遣準備が整っていません。
「基本計画」では、派遣機数は多用途支援機などをふくめ、最大で八機としています。今後の戦況しだいでは、自衛隊機が占領軍の兵員・物資の空輸などで大きな任務を負わされる危険もあります。
(竹下岳記者)