2004年1月24日(土)「しんぶん赤旗」
「自分は自衛隊のイラク派兵に反対です」。こういってイラクの自衛隊派兵反対のビラを配ったり、ピースウオークに参加している青年がいます。元陸上自衛官の井上隆さん(26)=仮名=。防弾チョッキに自動小銃を構えた自衛隊員が戦闘が続く地に立つ異様さ。「自衛隊には、まだ友人がいます。彼らを行かせたくない」。行動を支えているのは、“憲法を守ることこそ本当の国際貢献につながる”との思いです。
井上さんが自衛隊に入隊したのは、故郷でデザインの専門学校を卒業した二十歳の時でした。「進路とその後の生活に不安があったんです」。その時、目に飛び込んできたのが自衛隊員の募集看板。小さいころからの戦車大好き人間。叔父が自衛官だったこともあって、迷わず入隊を決めました。
配属先は陸上自衛隊第一師団(司令部・東京都練馬区)の特科連隊でした。
自衛隊をやめて一年半後の二〇〇三年三月、アメリカによるイラク攻撃が始まりました。「国連の支持もないルールを破った一方的な攻撃でしょう。おかしいとおもったし、自分でも何かしたい、でも一人じゃ何をしたらいいのか、何ができるのかわからなかったんです」
思い悩んでいた時、都内のJRの駅で、同世代の若者から一枚のビラを受け取りました。「ピースウオーク」の参加を呼びかけたものでした。
「迷ったんですけど、迷っているだけじゃどうにもならないと思って一緒に歩いた」。プラカードも持たされ「ノー・ウオー」(戦争反対)と声も出しました。マイクも渡されました。「とりあえず自衛隊の派遣に反対しています。たまたまビラを受け取って一緒に歩いています」と話しました。
転機になったのは衆院選挙を前にした昨年の八月初め。地域の人たちと聞いた日本共産党の小池晃参院議員の話でした。井上さんは手を挙げ思い切って質問しました。
「私は自衛官でした。共産党は自衛隊をどう考えていますか」と。
小池議員はアフガンで、医師として治療に協力したことなどの体験とともに、戦争に反対してきた政党だから共産党に入党したことや、自衛隊は憲法に照らして国民の合意でなくしていくことなどを丁寧に説明しました。
「本当の貢献とは何か、すごい説得力があった。自分は日本を守る組織は必要だと思うけど、憲法にそって自衛隊をなくす方向だったら納得できると思ったんです」
ルールを守って平和を守る──。この思いは自衛隊のイラク派兵反対の思いとも深くつながっています。
井上さんはいいます。
「小泉首相はイラク派兵にあたって国際貢献ということをしきりにいいます。でもイラクの占領支配自体、国連の支持を受けたものでもない。日本の国民の半数以上が派兵に反対しているし、イラク国民も自衛隊の派兵を願っているわけではない。それに国連憲章と精神が通じる憲法を守ってこそ、本当の国際貢献になるのではないでしょうか。だから自分は自衛隊の派兵に反対です」