2004年1月26日(月)「しんぶん赤旗」
デビッド・ケイ米イラク調査グループ(ISG)責任者が、「大量破壊兵器は存在しない」と明言し辞任した問題は、現場で調査にあたった最高責任者の発言だけに、米英両政権と世界に衝撃を与えています。ケイ氏は二十三日、生物・化学兵器は「もともと存在しなかった」、核兵器計画も「意味のあることは再開していなかった」と、ロイター通信に語りました。これは、フセイン政権による大量破壊兵器保有という、イラク侵略戦争の最大の口実を否定した発言です。ケイ氏の発言は、小泉自民・公明政権が「大量破壊兵器の保有」を断言し、イラク戦争を支持する「大義」にしたことの誤りも決定的にしています。
【ワシントン=遠藤誠二】 アナン国連事務総長は二十四日、スイスのダボスで記者団にケイ氏の発言について、「彼は経験豊かな査察官であり、以前に国連でこの問題に取り組んでいた。したがって彼の報告や発言は重く受け止めるべきだと思う」と語りました。
パウエル米国務長官は同日、訪問先のグルジアの首都トビリシに向かう途上、報道陣の質問に答え、「その質問の答えは、まだ分からない」とのべ、大量破壊兵器がイラクに存在していなかった可能性があるとの見解を示しました。
同長官は一年前に、国連安保理公開討論で、イラクに大量破壊兵器があると、米国独自の調査を踏まえ断定していました。「あの時点での最良の情報にもとづいて(国連で)発表した」と、責任を回避しました。
一方、ホワイトハウスのマクレラン報道官は「われわれは、彼ら(フセイン元政権)がそれらを持っていたと信じる。そして、大量破壊兵器は発見されると信じている」と発言し、二十日にブッシュ大統領が一般教書演説で主張した考えをくりかえしました。
【ロンドン=西尾正哉】デビッド・ケイ米中央情報局(CIA)特別顧問のイラクに「大量破壊兵器はなかった」との発言に英国メディアは二十四日、「ブレア首相に圧力を加えるもの」(ガーディアン紙)、「首相へのいっそうの打撃」(フィナンシャル・タイムズ紙)などとし、ブレア政府批判がさらに強まるとの見方を示しました。
タイムズ紙は、イラク戦争強行を批判して辞任したクック前外相の「ブレア首相は自分が正しかったと主張し続けることはできない」とのコメントを紹介。同氏は、イラクの大量破壊兵器開発をめぐるケリー英国防省顧問自殺に関するハットン司法調査委員会報告が出される「来週は、これまでの記録を正し、間違いを犯したことを認めるいい機会となろう」と述べています。
「イラクに大量破壊兵器はなかった」とする米調査グループ元責任者の発言でイラク戦争の「大義」のなさがいよいよ明らかになる中、小泉・自公政権は二十六日、その無法な戦争に本格的に加担するため、陸上自衛隊本隊の派兵を決めようとしています。
小泉純一郎首相は同日昼、首相官邸で公明党の神崎武法代表と党首会談を行い、陸自本隊の派兵を最終的に決定、これを受け石破茂防衛庁長官が陸自本隊とその物資などを輸送する海上自衛隊に派兵命令を出す構えです。
自公党首会談に先立ち、公明党は同日午前、拡大中央幹事会を開き、陸自本隊派兵を了承する見通しです。